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2011.02.12 (Sat)

海堂尊 マドンナ・ヴェルデ

マドンナ・ヴェルデマドンナ・ヴェルデ
(2010/03)
海堂 尊

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「ママは余計なこと考えないで、無事に赤ちゃんを産んでくれればいいの」平凡な主婦みどりは、一人娘で産科医の曾根崎理恵から驚くべき話を告げられる。子宮を失う理恵のため、代理母として子どもを宿してほしいというのだ。五十歳代後半、三十三年ぶりの妊娠。お腹にいるのは、実の孫。奇妙な状況を受け入れたみどりの胸に、やがて疑念が芽生えはじめる。「今の社会のルールでは代理母が本当の母親で、それはこのあたし」。(BOOKデータベースより)

「ジーン・ワルツ」外伝という感じ。
決して「マドンナ・ヴェルデ」を読んでから「ジーン~」を読んではいけません。「マドンナ~」には、マリアクリニックに通院している妊婦5人の事情もあっさりとしか書かれていないし、先にこちらを読んでしまうと、「ジーン~」のオチに驚けなくなるからです。
代理母への理解を深めるという意味で、二冊を読んでみるのはよいことだと思います。
この問題、今が旬なものでもありますし。

「マドンナ~」を読むことによって、クール・ウィッチと揶揄される曽根崎理恵が、代理母問題について本当に考えていたことが明らかになります。
この理恵も、ストーリーの中盤までは本当に嫌な女(個人的感想)として書かれています。合理的で冷酷な性格がよく分かるエピソードばかり。母ひとり子ひとりの家庭で育ち、若干母親が甘やかし気味に育てたという背景もありますが、それにしてもひどい。まあ、母親のみどりのほうにも、30過ぎた娘をチャン付けで呼ぶのはやめようぜ!と突っ込みを入れたくなりましたけれど。
と、若干冷めた気持ちで読んでいましたが、ラスト近くで明かされる、「理恵が挑戦したかったこと(あえてここでは書かない)」を知ると、とたんにグッとくるものがありました。
これはおそらく、性格悪いと思っていたクラスメートが、横断歩道を歩いているおじいさんの手を取っている姿を見て、思わずキュンとくるのと似た現象だと思われます。

また、先ほどあえて代理母問題について「旬」という書き方をさせてもらいましたが、代理母問題は非常に論議が難しいことだと言えます。代理母を、倫理に反するものとして論じる現代の社会。(もちろん、倫理面以外での医学的な観点等々からも問題が山積しているのですけど)なかなか論議が進まないのも理解できます。
代理母問題と、倫理。
そのことは、小説内にて、別の内容に置き換えて述べられています。
それは「不倫」について述べている、こんな一文です。
(引用)文学で不倫を堂々と扱ったから社会に認知され、その結果、倫理と社会の一部が壊れた。
(さらに引用)倫理が壊れた社会では、不倫なる言葉は死語です。論理的に定義すれば、不倫とは「倫理でないこと」になりますが、肝心のその倫理が不明瞭になってしまった現代の社会においては、不倫なる概念も消滅しつつあるものだ、と…(省略)
代理母問題も、いつか不倫のように「社会に認知されるもの」になるのでしょうか。そんな可能性を論じた記述ではないかと感じます。

そして最後に。タイトル、マドンナ・ヴェルデの「ヴェルデ」の意味は、「緑」です。
そうか、「みどり」か。なるほどね。いいタイトルです。
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テーマ : 最近読んだ本 - ジャンル : 本・雑誌

09:36  |  海堂尊  |  コメント(2)

2010.11.26 (Fri)

海堂尊 ジーン・ワルツ

号泣してしまいました。
ジャンルはミステリーのはずなのに、こんなに泣けるとは。
涙と鼻水が止まらなくて大変でした(キタナイ)
経産婦の方は必見です。
自分の子供をもっと大切にしようと思えるはず。


ジーン・ワルツジーン・ワルツ
(2008/03)
海堂 尊

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帝華大学医学部の曾根崎理恵助教は、顕微鏡下体外受精のエキスパート。彼女の上司である清川吾郎准教授もその才を認めていた。理恵は、大学での研究のほか、閉院間近のマリアクリニックで五人の妊婦を診ている。年齢も境遇も異なる女たちは、それぞれに深刻な事情を抱えていた―。生命の意味と尊厳、そして代理母出産という人類最大の難問に挑む、新世紀の医学エンターテインメント。(BOOKSより)

海堂作品には、本当に「切れ者」の女性がたくさん出てきます。
女性は、ディベートしていて負けそうになると最後は感情論に走るもんだと思っていたのですが(すみません本当に勝手なイメージであり偏見です)、海堂作品の女性たちは最後まで冷静に持論を展開し、どんな相手も打ち負かす。相手が官僚だって上司だってお構いなし。それがとてもカッコいいです。

小説では「極北クライマー」のその後の世界が描かれています。
「極北クライマー」に続いて地方医療問題が取り上げられていますが、更に「官僚批判」、「代理母」といったテーマが盛り込まれています。
社会が科学に追いついていない。
医療の技術は目ざましく進歩していってるのに、法律が足かせになって実践できない。
これは代理母や不妊治療助成の問題に限らず、ドラッグラグなどにも言える事ですね。

今回の小説はそれだけでなく、出産する妊婦さんたちにもスポットを当てています。
これがもう、ほんとに泣けるのだ・・・
医療は確かに進歩しているけど、それによって、産まれる前から胎児の障害や病気が発見できてしまう。
個人的に考えてしまうが、ダウン症を判定する羊水検査の意義だって、本当はどこにあるのだろう?
もし陽性が出た場合に、
「その子供が産まれた後のケアを事前に考えておく」ためにするのか、
「育てるのが大変だから中絶する」ためにするのか。
全然違ってきます。

小説の中で、出生後すぐに死んでしまうことが分かっている胎児を身ごもる母が言います。
「私、この子に、10ヶ月生きてきた証に、この世界の光を見せてあげたいんです」
出産を決意するわけです。
おかしい考え方だと思うでしょうか?

妊娠し、五体満足の赤ちゃんが生まれるというのは、当たり前のことではないのです。奇跡に近いことなのです。
恥ずかしながら、小説を読むまでは、そこまでの自覚がありませんでした。

ジャイは経産婦であり、どうしても出産シーンに一番感情移入してしまうのですが、他にも見どころ満載です。(なんじゃそのまとめ方!?)
最終章まで読むと、やっぱりミステリー小説だったんだと納得させられます。
妊娠・出産を医学の観点から勉強することもできる、お得な小説だったなあと感じます。

テーマ : オススメの本 - ジャンル : 本・雑誌

11:30  |  海堂尊  |  トラックバック(0)  |  コメント(0)

2010.11.21 (Sun)

海堂尊 極北クレイマー

海堂シリーズも、ちょびちょびマイペースで読み進めています。
今回は、コチラ~

極北クレイマー極北クレイマー
(2009/04/07)
海堂 尊

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財政破綻にあえぐ極北市。赤字5つ星の極北市民病院に、非常勤外科医の今中がやってきた。院長と事務長の対立、不衛生でカルテ管理もずさん、謎めいた医療事故、女性ジャーナリストの野心、病院閉鎖の危機...。はたして今中は桃色眼鏡の派遣女医・姫宮と手を組んで、医療崩壊の現場を再生できるのか。(BOOKSより)

今回は地方医療がテーマです。
しかし、細かいことを言うと、人口10万人の街にスーパーが一軒だけって設定はありえないと思うんだが・・・
まあ、ストーリーに直接関係ないことだし別にいいか

自分の話になりますが、ジャイが出産する折、妊婦検診を受けた病院の産婦人科医師は「出張医」でした。
検診の都度先生が替わり、中には「もう二度とコイツには診てもらいたくない」と思うような、適当な先生にあたったこともありました。
それでも、数年前まではその出張医すらいなかったらしいので、地方医療の現状はこんなに悲惨なんだ・・・と驚きました。
産婦人科や小児科はそれが顕著に表れていると思います。
いま日本ではあらゆる格差が問題になっていますが、医療の格差というのはダイレクトに生命に係わってきます。

そしてまた、過疎地医療はドクター側の負担も大きいんだと、小説を読んで初めて気付きました。
医者はつらくなったらその地を離れることができるけど、残される患者はどうなるのか??
患者をなんだと思ってるんだ。そう思うのが普通の感覚でしょう。でも、小説の中にお医者さんのこんなセリフが出てきます。
「患者はみんな自分勝手なクレイマーさ。病気だからマイナス状態からのスタートなのに、マイナスをゼロに戻すのは当然だと思っている。それがどれほど大変か、ちっとも理解しない。ちょっとでもマイナスが残ると一生恨み続ける。やってらんないよ」
うー、そうか。確かにそうだよな。
気付かされました。
病気を治すのは医者の仕事だろう、と当然に思っていた、浅はかな自分。
マイナスをゼロへ戻すのがどれだけ大変なことか、考えたこともありませんでした。
患者側から医者へ「元気にしてくれて感謝しています」という謙虚な気持ちを伝えていければ、ドクターの過疎地勤務の辛さも、少しは和らぐんじゃないでしょうか。

小説には、出産についての危険性についても述べられています。
ジャイ自身も、出産する時には「命が危なくなったらお医者さんもいるし、なんとかなるさ」と、安心しきっていました。
そうじゃないです。出産は最悪の場合、死も覚悟しなければいけない行為なんです。
医療ミスをした医者が、まるで人殺しみたいにメディアでたたかれ、市民から批判の目で見られるというのは、切ないです。
医者だって人間です。
だから医療ミスを黙認しろということが言いたいんじゃなくて、感謝されること無くマイナスをゼロにする努力を続けている医者の心情を、少しでも理解してほしいというメッセージがこめられた小説ではないでしょうか。

医療ミスが怖いという理由で医者のなり手が無くなったら、困るのは私たちです。

つけたし。
海堂作品の特徴である、登場人物を揶揄するオモシロニックネームは本作品でも健在です。
「北の土蜘蛛」、そして「ハリキリボーイ」もカワイイ路線でいいですね。

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09:39  |  海堂尊  |  トラックバック(0)  |  コメント(4)

2010.11.15 (Mon)

海堂尊 イノセント・ゲリラの祝祭

イノセント・ゲリラの祝祭イノセント・ゲリラの祝祭
(2008/11/07)
海堂 尊

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東城大学医学部付属病院4階。万年講師の田口公平は、いつものように高階病院長に呼ばれ、無理難題を押しつけられようとしていた。「お願いがありまして...」そう言って取り出した依頼状の差出人はあの火喰い鳥、白鳥圭輔。厚生労働省で行われる会議への出席依頼だった。幻の短編「東京都二十三区内外殺人事件」をプラスし、全面改稿した田口・白鳥シリーズ第4弾。(BOOKSより)

今回の読書感想文は、海堂尊作品です。
「チームバチスタ」「ナイチンゲール」「ジェネラルルージュ」「螺鈿迷宮」の順番で読んできましたが、今回も面白いです。
海堂作品は新作出るの早いですよね。もう、置いてけぼり感たっぷりでチト悲しいんですが、マイペースに読んでいこうと思っています。
「医療」と「推理」を融合させた独特の世界がたまりません。
海堂さんは現役の勤務医なだけあって、描写が細かくてリアルです。
普通の推理小説作家がどれだけ医療の現場を取材しても、同じようには書けないでしょう。

今回の「イノセント・ゲリラの祝祭」は、これまでの「ミステリー」のジャンルからは外れます。
直接的な殺人は出てきません。これだけを読むと少し違和感が残るかもしれません。
ただ、海堂作品は登場人物やストーリーが他の作品にクロスオーバーしてることが特長で、
他の作品を読むと「おお、ここでつながるんだ!おもろいぞ!」となるわけです。
読めば読むほど、他の作品が読みたくなってしまいます。

ミステリー小説と思って読まなければ非常に面白い本です。
医療の現状、所轄の厚生労働省、ひいては官僚体制にまでメスを入れる、スケールの大きい作品になっています。
登場人物の一人が、官僚と法律家の目の前でこんなセリフを口にします。
「論理破綻している医師法21条改訂という最低限の改正すらせず、そのままで済まそうとしている」
ジャイは専門家でないので分かりませんが、小説によると、異状死の明確な定義をせず、異状死届出違反について規定している条文であり、その医師法21条の拡大解釈による過剰な運用が問題視されているということです。
それに対して法律家はこう言うのです。
「悪法と言えども法は法、守らなくては社会が崩壊してしまう」

医師法21条に限らず、確かに、現行の法律って時代にそぐわないものが多いと思う。
所得税法の寡婦控除だって、なぜに今でもシングルマザーとシングルファザーで扱いが違うんだろ??

なんのために法律があり、なんのために官僚が存在するのか?
国を統治する法律が、国の発展の可能性を閉ざしてはいないか?
この小説を読むことで考えさせられます。

うーむ。大きいテーマの本だ。
さーて、次はどの海堂作品を読もうかなー

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