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2010.12.09 (Thu)

赤井三尋 どこかの街の片隅で

どこかの街の片隅でどこかの街の片隅で
(2008/05/16)
赤井 三尋

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夜が明け、朝が来て、また、いつもの一日が始まる。その何でもない日常に、小さなしみがぽつんと一つ。乱歩賞作家が満を持して放つ「人生の哀感と味わい」10編。 (BOOKSより)

赤井作品2冊目は、短編集でした。私は長編のほうが好きだったなあ。こちらも面白くはあったけど。
どの短編集も、ラストにどんでん返しがある設定になっています。
誘拐、殺人、金庫破り・・・
犯罪をネタにした短編が多いです。けれど短編同士の温度差が激しくて、これは自業自得だね!と笑ってしまう展開もあれば、重くのしかかる結末があったりもするので、そこに独特の起伏と面白さが生まれます。
全てがどんでん返しだけの短編なら、ストーリーも予測できてしまい、飽きちゃいますから。
(まあ、ここだけの話、ラストが予測できた短編もいくつか…あった。)
取り扱うネタも様々です。守備範囲の広い作家だなと感じました。さすが、記者!?

その中で一番面白かったと思えたのが、「花曇り」という、碁を扱った短編でした。
ジャイは碁の知識が全く無かったので、読み始めた時「ゲッ!」と思ってしまいましたが、知識ゼロでも面白く読めました。碁の対戦というよりは、名人位を保持する主人公の心情をメインに描いた短編です。
一人娘・葉子が結婚することになり、これまでの人生を振り返る主人公。
この物語にもラストでちょっとした驚きが用意されています。
最後に主人公はとある相手と名人戦を行いますが、この相手の素性が判明するくだりも素晴らしい書き方で、「そうきたか!」と思わず唸ってしまいました。
娘を愛する父の気持ち、人生に信念を持っている男の心情、グッときます。
この短編のためだけに小説を買ってもいいんじゃないかと思うくらい、素晴らしい話です。

あとは「青の告白」という短編も完成度が高いです。
高校教師が、とあることから、愛した同僚を毒殺しようとするストーリーです。
実際に毒殺が実行され、警察が高校教師の犯行を暴いてゆく過程も面白くはあるのですが、登場人物の性格や心情がすごく魅力的に書かれているところが素晴らしいです。
ジャンルはミステリーになるはずなのに、なんでこんなに私は感動しているんだろう!?
いや、まさに「人生の哀感と味わい」だ。こんなピッタリくる言葉もありません。

まあ、あえてこの小説の短所を挙げるとすれば、どんでん返しがあってストーリー的には起伏があり楽しめますが、犯罪メインの短編ばかりですから、読み終えた後の「爽快感」はほとんどありません。
スカッとしたいぜー!という時にはオススメしません。
いや、ミステリーなんだから、そんな用途を求められても困るか…。

二冊読んだ赤井作品は、どちらも緻密に練られているという印象です。とても面白かったです。
次はまた長編小説を読みたいです。
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09:30  |  赤井三尋  |  トラックバック(0)  |  コメント(0)

2010.12.08 (Wed)

赤井三尋 翳りゆく夏

図書館プロジェクト、2冊目のおすすめ本が出ました。

翳りゆく夏翳りゆく夏
(2003/08)
赤井 三尋

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「誘拐犯の娘が新聞社の記者に内定」。週刊誌のスクープ記事をきっかけに、大手新聞社が、20年前の新生児誘拐事件の再調査を開始する。社命を受けた窓際社員の梶は、犯人の周辺、被害者、当時の担当刑事や病院関係者への取材を重ね、ついに“封印されていた真実”をつきとめる。第49回江戸川乱歩賞受賞作。(BOOKSより)

いや、面白かった。
462ページの大作ですけど、全く気にせず読めました。
推敲に推敲を重ねた、という印象です。ものすごく文章が読みやすく、無駄が無く、細部の描写も完璧。
しかも最後に分かる真実に超ビックリ。
褒めまくりですけど、本当にそうなんです。

主人公の記者・梶は、ひょんなことから20年前の新生児誘拐事件について再調査を行います。
犯人は逃走中に事故死しており、既に時効が成立している事件です。

小説の中では、場面がころころ変わります。梶の行動以外にも、同時進行して色々な話が展開されていきます。そのスピード加減も絶妙です。ついていけなくなるということは、ありません。

また、大槻院長や比呂子といった明るめな性格のキャラクターが、小説に起伏を与えています。シリアスなだけの小説だと、長い小説ですから読んでいくうちに疲れてしまうでしょう。ポップなキャラクターが息継ぎ的な役割を果たしている気がします。
この二人だけでなく、登場人物の関係や性格についても非常に細かい描写で書かれており、どのキャラクターにも感情移入しやすいです。

あと、個人的にツボだった部分です。
内定を受けた女子大生が誘拐犯の娘だったということが公になり、内定先の東西新聞社の幹部が、内定を辞退しようとする女子大生を引き止めにかかります。全力で守ろうとしています。他の人間から「たかだか女子学生一人にそんなにムキになることないじゃないですか」と言われて激怒しています。
ストーリーに直接関係ない部分ですが、とてもいい話だなと思いました。
これが現実の話だったら、あっさり内定取消になってもおかしくないと思います。
人間の温かさを感じました。

ラストで真実が明かされますが、本当の意味での「悪人」は、この小説には存在しないのです。
「悪人」こそいないものの、赤ちゃんが誘拐されたという事実によって、20年間多くの人が傷ついてきました。
誘拐された赤ちゃんの父母と対面するシーンでは、20年経っても赤ちゃんがいなくなった現実を受け入れられない両親の悲しみや葛藤が痛いほど伝わってきます。
一番事件に関係していた人間が最後に書いた「手記」が、ずしりと重い・・・

「おすすめのミステリーはなんですか?」と誰かに聞かれたら、ジャイはこの本を薦めることにします

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09:35  |  赤井三尋  |  トラックバック(0)  |  コメント(0)
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