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2010.12.25 (Sat)

明野照葉 家族トランプ

家族トランプ家族トランプ
(2010/04/15)
明野 照葉

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風見窓子。33歳。一般職の正社員として勤務する会社に不満はないし、寿退社する後輩女性を妬んでもいない。友人以上恋人未満の交際相手はいるけれど、べつに結婚したいと思っていない。しかし同居する両親からは「干支三回りが限度」と宣告されてしまう...。そんな彼女に「しないの、結婚?」と声をかけてきたやり手の女性上司、47歳で独身の有磯潮美。東京下町・三ノ輪にある潮美の実家に通い出したのをきっかけに、窓子の日常は突如として変容し、家族作りのカードのシャッフルがはじまった!社会からも東京からも家族からも危うくはぐれそうになっている三十代未婚女性の居場所探しの物語。(BOOKSより)

同じ作者の小説でも、「澪つくし」とは全然違ったテイストの本でした。
結婚についてこんなに事実を言い当てている小説は今まで無かったなあという感想。

題名にもなっている「家族トランプ」とは、昔あった「家族合わせ」というゲームから取られた言葉です。
ちなみに昔とは、明治末期あたりの頃を言います。絵合わせカルタのようなものです。
こんな偉そうに説明しているけど、わたくしはこの小説を読むまで知りませんでした。

遊びの家族合わせなら負けてもいいけど、人生の家族合わせの負けとなると、これはきついよ。
そんなセリフが小説の中に出てきます。

主人公の窓子は少々受け身な性格で、何事にも消極的。友達にするとイライラしそうなタイプです。
対して、そんな窓子とは正反対の性格、活発なキャリアウーマンの潮美。
共通点は女であることと独身であることだけ。
実際の世界では絶対に仲良くなれないと思われる二人。
小説だからこそ成り立つ(?)対照的な二人の掛け合いが、結構面白いのです。

ドラマか映画にするなら、絶対に無理ですが、潮美は蓮舫さんにやってもらいたい。
潮美が登場するシーンで「顔は笑っていても目は笑っていない」という一文が出てくるのですが、
読んだ瞬間、事業仕分けをしている蓮舫さんの顔が浮かびました

潮美の家族が一同に集う「磯屋」の雰囲気がアットホームで最高です。
30代独身、崖っぷちの窓子が「ここの家族になりたい」と思うのも、うなずけます。
そんな過程で決めた、いきなりの結婚。
焦っていたわけでもなく、きっとこうなる運命だったのでしょう。
自分の家族トランプの札が磯屋に落ちているのを見つけたのでしょうね。

温かい磯屋の雰囲気。窓子と潮美の掛け合いも面白い。結末も、言っちゃいますがハッピーエンドです。
でも、読んだ後に何だか腑に落ちない気分にさせられるのは、窓子の両親のおかげなのかと思います。
今時こんな親いるんかー?
百歩譲って、33歳になっても結婚する素振りを見せない一人娘が心配と言う気持ちは分かる。
それでも、娘の彼氏について学歴をけなし、勤め先をけなし、容姿をけなし。
「君はH学院大学が第一希望だったの?」
「今のお住まいはマンション?いや、コーポラスね」
フルボッコにされた彼氏は、当然ですが窓子から去ってゆきました。

こんな両親に育てられた割には、窓子は謙虚でまともな性格をしているよなあと感じました。
でも、窓子の両親までゆくと少しオーバーではありますが、世間一般の親の気持ちとはこんなもんだと思います。
やっぱり自分達の娘には幸せな結婚をしてもらいたいと思うでしょう。
で、幸せの基準が、「一流大学卒」とか「大企業勤務」とか、分かりやすい物差しなだけなのです。
悪気があるわけじゃないんですけどねー・・・
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テーマ : 最近読んだ本 - ジャンル : 本・雑誌

09:34  |  明野照葉  |  トラックバック(0)  |  コメント(0)

2010.12.23 (Thu)

明野照葉 澪つくし

澪つくし (文春文庫)澪つくし (文春文庫)
(2009/11/10)
明野 照葉

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現代社会とは無縁と思われる習わしや言い伝え。その禁忌を破ったとき、平穏だったはずの世界が、恐ろしいものへと豹変する―。人の死にまつわる不思議な力を持つ家系に生れた女性の哀しみを描いた、著者のデビュー作「雨女」、その続篇となる表題作など、哀しみと恐怖に溢れる八篇を収録した短篇集。(BOOKSより)

短編の一つが著者のデビュー作だということは小説を読んだ後に知りましたが、才能ある作家だなあと感じました。文章の書き方が緻密で、情景が生々しく、怖さを引き立てています。怖さと言っても、お化けがでてくるような怖さではありません。
ギャア!とくるような怖さではなく、するめのように、噛めば噛むほど(読めば読むほど、の例えです。わかりづらい?)怖くなってくるのです。
怖いのは・・・「人間」です。

この小説では、あの世とこの世を繋ぐ話が多く語られています。

短編「かっぱタクシー」が一番面白かったです。
主人公の中年男が運転する個人タクシーに乗せる客は、痴呆症の妻。
個人タクシーでなく、個人用タクシー。
徘徊する妻を捜して、見つけて連れ帰るために個人タクシーを営業しているような一日です。
その車内で、妻が身の上話を語り始めます。もちろん、話している相手が自分の夫だと言うことは、分かっていません。
身の上話に隠されていたのは、おぞましい事実でした。主人公には、それが真実かどうかを確かめる術がありません。
過去、主人公は浮気をしていました。
そのことで妻は精神的に滅入ってしまい、大きな一つの事件が起こってしまうのです。
痴呆の妻のために個人タクシーを走らせるのは、せめてもの罪滅ぼしと言うわけなのです。
しかし、ときどき主人公は思うのです。もしかすると・・・妻は痴呆などではないのかもしれない。
聞かされたおぞましい事実は、主人公に復讐するための嘘なのかもしれない。
もがいて苦しむ主人公が哀れになります。
痴呆が自作自演の嘘ならば、世にも怖ろしい復習劇です。人間って、怖いな・・・

「かっぱタクシー」を読んで、ズーンと落ち込んだ気持ちを回復させてくれたのが、次の短編「三途BAR」でした。
もう一つ「石室」という短編も、あの世とこの世を繋ぐという大きなテーマに則って語られますが、怖さではなく温かさが伝わってくる物語です。
しかし一方で、この二つの短編は、あの世とこの世の境界線が非常に曖昧に書かれています。
いるはずのない人の姿が見える、いるはずのない人の気配を感じる。
もしかすると、境界線というもの自体が存在しなかったりするのかも?
そう考えると、やっぱり怖いのだ。

おそらく、あの世とこの世を繋ぐ=生と死について、それに絡めた人間の恐ろしさというものを筆者は書きたかったのではないかと思います。

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09:24  |  明野照葉  |  トラックバック(0)  |  コメント(0)
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