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2011.01.17 (Mon)

朝倉かすみ 静かにしなさい、でないと

静かにしなさい、でないと静かにしなさい、でないと
(2009/09/25)
朝倉 かすみ

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自作自演の子犬救出劇を同級生に目撃され、転落していく美少女。カード破産しながらもロハス生活を実践しつづけるカップル。短命の家系に生まれた夫の「ぽっくり」を恐れる中年初婚夫婦etc…「わたし」という容れ物の限界に翻弄される人たちの、哀しくも可笑しい自意識を描いた傑作。 (BOOKSより)

朝倉かすみ小説の特長として「タイトルの付け方が秀逸」が挙げられるかと思います。
例えば、図書館に行って「今日はどんな本を読もうかなあ」とぶらぶら本棚を眺めているときに、変わったタイトルの本があったら興味がわくでしょう。とりあえず、読んでみようと。
手にとってみて、次に気にするのは、当然ですが中身です。ここで自分は、最初のページをちょっと読んでみることにしています。そこで気に入ったら続きを読む。逆に言えば、導入部分で「面白くない」と感じてしまったら、もうその本に対する興味は無くなってしまいます。
その点についても朝倉かすみは優秀だなあと思うのです。

まあ、今自分が挙げたことは、小説家にとっては当然抑えておくべきポイントであり、改めてここで文章にするまでも無いことかと思うのですが、とにかくこの二つのことがしっかり守られているといった印象を受けたのでした。

先日読んだ「肝、焼ける」でもそうでしたが、朝倉かすみさんという方は、少し「イタイ」女性を書くのがお好きなのかもしれません。
内海さんという独身女性が出てきます。内海さんの本名は内海恵理伊(エリイ)と言い、あだ名はエリー。いとしのエリーのエリーです。名前は可愛いのですが、容姿は世間一般で言うブスであり、おまけにワキガ。
彼女も色々なことを考えて生きていますが、「肝、焼ける」にあった独身のコマドリさんよりも更に、自虐的なのであります。
確かに、容姿が劣っていることを自分が認めてしてしまうと、その思いは渦を巻いて、急速な下降をたどっていくでしょう。ネガティブスパイラルに陥ってしまうのです。必要以上に自分を貶めて、悲観します。
それだけならまだしも、自分と同じような容姿をした他の女性にステキな話があっても、認めず疑ってかかる。
ブスなのにお持ち帰りされるの? なあんて、ブスには恋愛なんて絶対できないんだと決めつけてる。

この内海さんはブスであり、激しい劣等感を持って生きていますが、人間だったら誰だってこういう心の部分を持っているんじゃないかと思います。
必要以上に自分を気にする。そう、自意識過剰です。
自分を分析するという行為は、簡単なようで非常に難しいことだと思います。
大体の人が、自己評価について、本当の位置より「良すぎる」か「悪すぎる」かに偏ってしまうと思うのです。

この小説の最後に位置する短編「ちがいますか?」に出てくる女性は、軽い人格障害ではないかと思えるくらいの妄想っぷりを披露してくれます。ここまでいくと普通の人間レベルを超えてしまいますが、「自意識過剰」をテーマにすれば、やはりこれも同類になってしまうのでしょう。

心の中をリアルに表現した作品であり、読んだ後にはテンションが下がること必至です。
なので、感想としては「面白い」というより「興味深い」と表現したほうがよいかなあー。
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2011.01.16 (Sun)

朝倉かすみ 肝、焼ける

肝、焼ける肝、焼ける
(2005/11)
朝倉 かすみ

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歳下で遠距離恋愛中の彼氏に会うために、こっそり訪れた稚内。地元の人たちの不思議なパワーのおかげで、もやもやした気持ちが変化していく。「肝、焼ける」―激しいじれったさを表す方言が、真穂子を新たなステップに駆り立てた!?30代独身女性の「じれったい気持ち」を軽妙に、鮮烈に描く第72回小説現代新人賞受賞作を含む短編5作を収録。(BOOKSより)

読んでいくうち、「なになに」とか「行く行く」と、同じ言葉を繰り返すのも北海道弁の特徴であることを知った、三十路のジャイ。普段使いしているコトバで、方言かどうかの判断なんて出来ないですよね~。ちなみに北海道の中でも、地域ごとに微妙な方言の差があります。札幌の都市部で「だべさ」を使う人間にはあまり出会えません。北海道はでっかいどーだから当然なんですけど。
朝倉かすみさんも北海道出身の作家さんです。ちなみに朝倉卓弥さんとは何の関係もありません。

「肝、焼ける」でスタートするこの本ですが、方言を駆使した個性的な文面であるのにもかかわらず、あまり心に響いてこない感じがします。短編に出てくる男性も不思議キャラでイライラしてくるし(個人的な感想なので悪しからず)これはちょっと合わないかなあー・・・と思いながら渋々読んでいたのですが、四編目の「コマドリさん」を読み始めた途端、ガッとテンションが上がりました。おもしろい!
ちなみに、朝倉かすみさんは、2003年「コマドリさん」で北海道新聞文学賞を受賞、その後2004年に「肝、焼ける」で小説現代新人賞を受賞されています。個人的には「コマドリさん」のほうが完成度高いと思いました。

ということで、「コマドリさん」の感想をば。
コマドリさんは妙齢ながらも、これまでに異性とお付き合いしたことが一度も無いという女性です。
気配り上手、仕事もそつなくこなし「いいお嫁さんになるよ」と周りから絶賛されているのに、結婚できない。
そんなコマドリさんの思考回路が、面白いの一言なんです。
中学生時代、ヤンキーの早熟女子から色恋沙汰の話を聞いたときのコマドリさん。
高校生時代、好きな男の子ができて、彼とのデートを想像するコマドリさん。
大人になってから、数々お見合いをこなし、そこでいろんなことを感じるコマドリさん。
異性経験の無いコマドリさんには、経験則が使えません。そのため、マニュアルに書いてあることが正しいと思ってしまうのです。例えるなら、頭でっかちになって机上の理論を展開する政治家と似ているかも。

コマドリさんには妹がいるのですが、本当に対照的な二人です。
整形疑惑のある女優について、コマドリさんは否定派です。「だって、ずるをしているんだよ。ナチュラルじゃないよ。そうまでしてキレイだって言われたいのかねえ」
対する妹の意見はこうです。「ナチュラルならいいってもんじゃないよ。キレイになりたいって気持ちと『そこまでやりたくない』って気持ちのどっちがナチュラルなのか、いっぺん考えてみたほうがいいんじゃない」
こんなに考え方の違う姉妹も珍しいなあ

そして、生き方についても対照的。
妹は職場で上司と不倫し、上司は妻子と別れ妹と再婚します。そんな結婚ダメだと言うコマドリさんに、妹は言うのです。「そんなこと分かってるよ。でも、しょうがないことだってあるんだよ。お姉ちゃんには分からないよ」
…妹の行動を正当化するつもりはありませんが、言ってることは正しいと思います。
異性経験の無いコマドリさんの意見には、説得力が無いからです。

ちょっと痛いキャラにも思えてくるコマドリさんですが、ラストシーンでようやく一歩前進した彼女に拍手を送りたくなります。読んで損は無い、面白い短編です。

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09:30  |  朝倉かすみ  |  トラックバック(0)  |  コメント(0)
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