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2011.02.22 (Tue)

安達千夏 ちりかんすずらん

ちりかんすずらんちりかんすずらん
(2009/08/29)
安達 千夏

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板前だった父は錦糸町のパブで出会ったコロンビア人女性と出奔、彼女の子どもが待つ本国へと旅立った。そして母と祖母、私の三人がひとつ屋根の下に残された。祖母は血は繋がっていなくても、これからもこの家で女三人で暮していこうと提案した。それから七年。旅に観劇にと趣味に忙しい悠々自適の祖母、フットマッサージ店のやり手経営者となった母、そして商社をやめ児童館の指導員として毎日を送る私。私には、IT系広告会社の社長ユウジというフィアンセがいる。安達千夏が描く、女三人家族の日常。(BOOKデータベースより)

ええのう、ええのう。ドラゴン○ールの亀○人みたいな感想です。
…これでは全く理解不能ですね。
女三人家族の日常とは、いかにも女性作家が好みそうな題材。ありがちで平凡なストーリーを想像していました。この手の小説は家族の温かさをテーマに描くため、総じて「ほっこりした、家族っていいなと思った、料理がおいしそうだった(なぜか多い)」という感想を持ってオシマイということが多いです。
安達作品、「モルヒネ」から読んだのは間違いだったかな…と思っていたのですが、読み始めてみると、なかなかどうして面白いのです。
「家族っていいなと思った」というお決まりの感想も持ちましたが、それに加えて「読み物としても楽しめた」という感想です。

登場人物が、いそうでいないキャラクターであるから面白いんだと思います。
大体の読者は、主人公の祖母に対して好感を持つこと必至でしょう。
老いを感じさせない探究心、好奇心のカタマリという印象です。よく言われている「老いは作られる」という言葉は正解だなあと再確認。また、料理もお上手であり、ナンプラーを使ったエスニック風味のにゅうめんを作ってしまうといいます。昔から、おばあちゃんの得意料理といえば「煮物」「きんぴら」と相場が決まっているではないですか。定着されていた「おばあちゃん」のイメージを見事に裏切る作品です。
この祖母、新しく携帯電話を購入するときも、ボタンが大きいものではない普通の携帯電話を購入しています。そして孫からレクチャーを受け、メール入力の練習をしています。若いおばあちゃんですよね。
でもまあ考えてみると、人間は必ず年を取るものだから、携帯を自在に操る今の若者だっていつかは老人になり、彼らは老人になっても携帯電話を使うはずです。そこで「携帯を使いこなせるなんて、すごいおじいちゃんですねー」なんていう言葉をかけるのは、お門違いなんです。自分たちが持つ「老人」のイメージは、この先どんどん崩れていくことだろう。
…話が脱線しました。感想に戻ります。

キャラクターでもう一人、好感の持てる人物がいました。主人公の婚約者、ユウジです。
IT広告会社を立ち上げ、超多忙な生活を送りながらも、婚約者や友人を大事にします。仕事で忙しい男は、プライベートな時間は自己中心的になりがちです。それなのに、少しの暇を見つけて主人公とデートし、その時間も楽しむユウジ。人間的なキャパシティが大きくないと、こんな振る舞いはできないはずです。
こんな優良物件には滅多にお目にかかれません。恋人と協力し楽しくシチューを作ったり、祖母に料理を教えてもらうという男がどこにいますか。こういう男と結婚できたら、女はきっと幸せになれます。
唯一心配になるとすれば、起業した会社の行く先です。小説によると、ようやく純利益が出始めたとありますので、とりあえず今は安心。この先どうなるか分かりませんけど。
金の切れ目は縁の切れ目と言いますから、ユウジにはがんばってもらいたいですねーー!!

こんな感じで、魅力的な登場人物がストーリーに華を添えています。
「モルヒネ」を書いた作家と同一人物に思えない。安達千夏さん、どんな作風もいける方なんですね。
ええのう、ええのう。
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テーマ : 最近読んだ本 - ジャンル : 本・雑誌

09:21  |  安達千夏  |  コメント(2)

2011.02.18 (Fri)

安達千夏 モルヒネ

モルヒネ (祥伝社文庫)モルヒネ (祥伝社文庫)
(2006/07)
安達 千夏

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在宅医療の医師・藤原真紀の前に、元恋人の倉橋克秀が七年ぶりに現われた。ピアニストとして海外留学するため姿を消した彼がなぜ?真紀には婚約者がいたが、かつて心の傷を唯ひとり共有できた克秀の出現に、心を惑わせる。やがて、克秀は余命三ヶ月の末期癌であることが発覚。悪化する病状に、真紀は彼の部屋を訪れた…。すばる文学賞作家が描く、感動の恋愛長編。 (BOOKデータベースより)

久しぶりに、女性作家が描く純文学プラスアルファの面白い小説に出会えました。
「プラスアルファ」という表現を使ったのは、カテゴリは純文学だけど、決して読みにくい純文学ではないからという意味を込めたものです。まあ、それでもやっぱり純文学であり、難解なんだけど。それが面白いという感想もあれば、わかりづらくて嫌いという感想もあるはずで、やっぱり純文学というのは奥が深いと思います。

最近ジャイが読んでいた女性作家の小説は、けっこう「等身大の女性の、よくある日常が描かれていて非常に共感できました」という一文の感想で終わってしまうような内容が多かった気がしたので、ちょっと飽きていたのです(まあ決してこの手の小説がダメですと言いたい訳ではない)。

話を戻し、小説の感想です。
とにかく描写が上手な作家です。
明るい光景よりは、影のある光景の書き方がお得意なんですねという印象。
ラスト近くで主人公が訪れるアムステルダムの景色も、どことなく哀しい。
(引用)晴れた空が白っぽく見えるのは、気候のせいだろうか。たっぷりと日差しは振るのに、見上げる空は、なんとはなしに力を欠き弱々しい。透ける、薄い、水に張った氷の色で、見つめるほどに冷ややかで寂しい。
うーん。独特の表現をされていると思います。「安達小説」の立ち位置を確固たるものにしていますね(こんな表現は大袈裟か)。
(引用)落ち葉が敷き積もる獣道は、明け方の霜で湿り、踏みしめるほどにやわらかくやさしく、~、壊れた網目のような隙から覗く空は、雪を予感させるほど低く翳っている。

そして、この小説は「恋愛」よりも「生と死」に深く切り込んだ作品だと思います。
BOOKデータベースでは「恋愛長編」と称されてますけど、そこまで恋愛べったりの内容ではありません。
生きることと死ぬことは、正反対のように感じるけど、本当は対を成すものであり、語る上では同一の事象ではないかと感じます。
主人公は、過去の忌まわしい記憶から逃げるため、幼い頃から自殺を考えていました。そして、合理的に死ぬために、医者という職業を選びました。
その主人公を変えたのは、元恋人の存在でした。久しぶりに再会した元恋人は、病気によって余命僅かの体となっていました。そんな元恋人と接するうち、主人公の「生と死」に対する考え方が、今までと真逆の方向へ動いていくのです。
そして、主人公は苦悩から逃げていた自分を変える決心をするのです。
不治の病、知人の死、尊厳死問題など扱うテーマが重いために、ストーリーは暗めなトーンで進行してゆきます。けれど、ラストで一つの光が見えます。前向きに生きてほしい。主人公の過去は壮絶なもので、自分なんかが理解できるほど簡単なものではないんですけど、それでも主人公のこれからを応援したくなります。

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09:41  |  安達千夏  |  コメント(0)
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