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2011.04.13 (Wed)

阿部和重 グランド・フィナーレ

グランド・フィナーレグランド・フィナーレ
(2005/02/01)
阿部 和重

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終わり、それとも始まり……神町を巡る物語。
「グランドフィナーレ」という名の終わりの始まり。
毎日出版文化賞、伊藤整賞W受賞作「シンセミア」に続く、
二人の少女と一人の男を巡る新たなる神町の物語。
第132回芥川賞受賞作。 (内容紹介より)

エンタメ寄りなイメージの芥川賞作品で、あまり敷居の高さを感じずに読めると思います。
主人公の沢見さんの語り口は非常にまともであり、どうしてこんな良い人が離婚されてしまうの?と思っていたら、少しずつ明かされていく事実に驚かされ、呆れてしまいます。「第一印象は重要です」という言葉を思い出すなあ… 
確かに、最初に「少女ヌード撮影を副職としていたロリコン男で、モデルの小学生とも寝たことがあり、バレて離婚し現在は独身」という主人公のプロフィールを教えられたら、読者はそのフィルタをかけて小説を読み進めてしまうでしょう。
阿部和重という作家は、読者を意識的に引っぱっていける筆力を持っていると思います。
…ただ思いのままに書くというのも小説の書き方です。あまりプロットを練らずに、結末を決めずに、とりあえず書き始める。村上春樹がそんなタイプだと聞いたことがあります。村上春樹は村上春樹の良さがあると思います。それもまた優れた才能だと思います。簡単に誰にでもできることではない。
対して、阿部和重は全てを計算して小説を構築しています(私が感じているだけなので本当のところは分かりませんが)。意識的に読者の心情を操り、ポイントを用意して一気に小説の世界へ連れて行く、そんなイメージがあるのです。

途中まで読んで、これはロリコン男の転落人生劇場なんだろうかと思いきや、物語は急展開を迎えます。ロリコン男に、二人の少女を守ると言う使命が課せられます。全く結びつかない出来事、読めない展開が面白く、小説を読んでいていろんなところへ連れて行かれます。最近、川上未映子の「乳と卵」を読みましたが、同じ芥川賞でも全然違います。「乳と卵」が静か、淡々としたイメージであるのに対し、「グランド・フィナーレ」はものすごく動のイメージ。

使っている比喩が現代風なのも面白いです。
(引用)Yにとっては私のプロフィールなど、ワンルームマンションの玄関によく散らばっているデリヘルや廃品回収業者の宣伝チラシと同程度にどうでもいいものでしかないのだから。
…うん、確かに、どうでもいいよね。分かりやすい。美しい言葉や珍しい言葉を多用するだけが文学ではないんだと感じます。

「神町」という架空の町を舞台にした物語ですが、サーガ物となっており、他の著書を読めば更に理解が深まるということです。確かに、読後にちょっと謎が残る部分もありました。とりあえず、相棒の人形にはもう少し深い意味があるんじゃないかと思います。それから、小説内に、神町について説明程度に少しだけ語られた出来事があったのですが、それもおそらく他の著書を読めば明らかにされるのでしょう。
読んでみたい気もするけど、今はいろいろ他に読んでみたい本があるので、あ・と・ま・わ・し

いつも、決めかねている曖昧なことはとりあえず後回しにして、結果忘れてしまう私です。
きっと、他の著書は読まないだろう。そんな気がする。
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08:35  |  阿部和重  |  コメント(2)

2011.02.28 (Mon)

阿部和重 ミステリアスセッティング

ミステリアスセッティングミステリアスセッティング
(2006/11)
阿部 和重

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ある老人が語りはじめた、一人の少女の運命――ハムラシオリという、歌を愛してやまなかった女の子をめぐる、痛いほど切なく、あまりにも無慈悲な新世代のピュア・ストーリー。なぜ彼女だけが、苛酷な人生を歩まなければならなかったのか? この未知なる感動の物語は、21世紀版「マッチ売りの少女」として広く語り継がれるだろう。芥川賞受賞後に初めて書かれた、極限の純真小説。全く新しい阿部和重! (内容紹介より)

面白かったです。。こんなに予測できない展開の小説は久しぶり。
プロローグは公園。それから姉妹ゲンカになり、核爆弾が出てきてスーツケースとデートし、衝撃のラストシーンへ。(まあ、この程度ならネタばれにもならないだろうから、堂々と書いちゃいます)
意味不明、どうしてそんな話になるの!?と不思議になるでしょう。読んでいる間、どうやっても先が見えませんでした。でも、これでこそ小説だと思います。いくら登場人物が魅力的でも、扱っているネタが興味深いものでも、予想通りの展開しか用意されていない小説では、とたんに興ざめしてしまいます。
そもそもですが、この小説、「ケータイ小説」として連載されていたものを単行本化したものだそうです。なんとなく、全体を通して飽きさせないような書き方をしてるな、という印象を持ちました。ケータイ小説ということは、購読者層は私(ミソジー)より下の世代になるのでしょうか。けれどもこれ、ケータイ世代じゃない方が読んでも、面白いと思います。

主人公のシオリがものすごく純粋な女の子であり、生粋の性善説保持者です。で、他の登場人物、みな性格が悪いときています。妹のノゾミは容赦なく姉をいたぶり、家庭でも安らげない。純粋さにつけこまれ何度も騙される。シオリは常に四面楚歌のような状態にいます。
少しドンくさいな、と共感できずに読み進めていましたが、中盤あたりから急に、そんなシオリから目が離せなくなりました。純粋であることは美しい。悲しいラストであるはずなのに、輝くような読後感を得ることができました。

そして、これは面白いポイントですが、小説内にはシオリが実際に喋るセリフが出てこないのです(まあ、正確に言うと、ラストシーンで留守電を吹き込んでいますが)。つまり、セリフからシオリという人間のリアルな人格が読み取れません。それが、シオリの存在自体が夢だったんじゃないかというボカシの効果を与えているような気がします。
序盤こそ陰険な小説だなあというイメージでしたが、そんなイメージも、読後は180度変わります。全てのシーンはローマならぬラストに続くのだなあと感じました。

これは余談ですが、途中で「おなかに重いものをドスンと落とされたような心地よい衝撃を覚えながら」という描写が出てきます。いつか彼氏の前で歌いたいという夢を持っていたシオリが、彼氏から「歌ってよ」とお願いされたシーンで、この表現が使われています。うーん、うまい。ありそうで無かった表現だと思います。

こんな描写があり、読めないストーリーがあり、安部和重という作家がものすごく気になってしまったジャイでありました。内容紹介に「全く新しい阿部和重」とあるので、他の作品は毛色が違うんだろうと思います。少し古い表現をするなら、要チェックやーーー。 …おわり。

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09:07  |  阿部和重  |  コメント(6)
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