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2011.03.14 (Mon)

芦原すなお カワセミの森で

カワセミの森で (ミステリーYA!)カワセミの森で (ミステリーYA!)
(2007/05)
芦原 すなお

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わたしこと、桑山ミラは、陸上競技にマジメに打ち込む文学少女。もっとも、ある人の言葉を借りれば、「不幸そうで、お金持ちじゃなさそうな家庭に育ってそうで、植木屋の親方みたいに髪を刈って、胸の大きくなさそうな女の子」らしいけど。しっかし、これって、ずいぶん失礼じゃないかい?それはさておき、これは私が16歳の時に巻き込まれた恐ろしい事件の物語。それはカワセミの森で、親友をめぐって起きた、忌まわしい連続殺人事件だった…。斬新なのに懐かしい青春小説の紡ぎ手・芦原すなおがユーモラスな語り口で贈る極上のホラー・ミステリー。(BOOKデータベースより)

芦原すなお小説の大ファンになってしまい、わくわくしながら四冊目に挑戦してみました。

感想。とてもガッカリでした。ちょっと酷評ですが大ファンだからこそです。許してください(誰に言ってる?)
この小説をお書きになったときの芦原さんの年齢が57歳。若い女子高生たちの姿を書くのは非常に難しいことだと思いますし、芦原さんの文体が持つ暖かい雰囲気は、ミステリーには不向きだと思います。何となく喜劇チックな雰囲気で展開されていく、リアリティの無いおとぎ話という印象でした。
無理して不得意分野で頑張らなくても…という印象です。
SMAPの中居ちゃんがソロ歌手デビューするようなものです。

まず、主人公の女子高生ミラに全く共感ができません。全く色気の無い外見、オヤジくさい喋り方、そして彼女が例えに取り出す話が渋すぎます。「坊ちゃん」の清みたいはまだ許せるが、「芋粥」の武士みたい、「金色夜叉」みたい…という例えが通じる中高生の読者がどこにいる?いたとしても少数派でしょう。こういうのが出てくるから、前述したように、若い女子高生をリアルに書けてないなとの結論に至るわけです。

そして、ミラの心の声を表す(カッコ)が多用されすぎで読みづらい。これはレトリックの「挿入法」というテクニックで、本文の流れに対する批判的な視点を表現するのに用いられるものです。…と、最近読んだ「日本語のレトリック」という本に書いてありました。繰り返しますが、読みづらい。「日本語の~」に、「やりすぎはダメ」と書かれている意味が分かりました。

あと、ミステリー小説には、とりあえず序盤で誰か死ぬという「ルール」があるものだと思っていました(ワシの勝手な思い込みかも!?)。この「カワセミ~」は、殺人が起こるのが小説の終盤という、ルールを無視したアウトローな展開となっています。そして、一人目が死んだ後、ドミノ倒しのように次々と殺人が起きていきます。これもまた珍しいパターンです。
じゃあ終盤までは何が書かれているのかと言うと、主人公ミラと親友のサギリが織り成す日常と、殺人事件への伏線です。本当に長ーい長ーい伏線です。読んでいて、面白くなくは無かったです。でも、刺激を求めてミステリを読む人にはお勧めできません。変な話ですけど、ミステリーの序盤で起こる殺人は、小説のテンポを決定付ける重要な要素を含んでもいると思います。それがなくなると、やっぱり間延びした小説になってしまうんだなあ。

最後に、微妙にどうでもいいことですが一つだけ。中高生向けの小説なのであれば、誤解するような表現を使わないほうがいいかと思います。「あいまいもこもこ」という単語が出てきます。当然、曖昧模糊(あいまいもこ)のパロディなんですけど、本当にあいまいもこもこという単語があるもんだと誤解してしまう若い読者が、中にはいるかもしれません。
「土砂降りの雨は高速を降りる頃には砂降り(しゃぶり)くらいになり」という一文を読んだとき、本当にしゃぶりという単語があるのか、わたくし辞書を引いてしまいました。載ってない!!当たり前ですけど。。
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テーマ : 最近読んだ本 - ジャンル : 本・雑誌

08:35  |  芦原すなお  |  コメント(0)

2011.03.04 (Fri)

芦原すなお 野に咲け、あざみ

野に咲け、あざみ野に咲け、あざみ
(2008/10/09)
芦原 すなお

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自立の心と負けん気で幾多の試練を乗り越えて「いのちの花」を咲かせた泣き虫律子の多感な青春。実母をモデルに波乱の昭和と讃岐の「女坊ちゃん」誕生を描く。
四国新聞、西日本放送などで好評連載。直木賞作家の最新長篇小説。 (内容紹介より)

芦原すなお。「青春デンデケデケデケ」がものすごく面白く、他の著書も読んでみたいぞ!という欲求がむくむくむくむく湧いてきました。「野に咲け、あざみ」は、そんな私の期待に真っ向から応えてくれました。うん、面白かった。
今回の小説は、芦原さんの母親の実体験がベースになった物語です。ほぼノンフィクション・ノヴェルとのこと。ノンフィクションがこんなに面白いなんて。素材が素晴らしいのもありますが、それに飄々とした「芦原節」が加わって、読み物としてパーフェクト(お世辞ではなく)な仕上がりになっています。
そういえば田山花袋(「蒲団」の人です)がこんなことを言っていました。
「事実を骨子として描いたものなら、たといその作品は失敗の作であろうと、そこに動かしがたい『事実』という点がある。いかに美しくても造り花は造り花、傷があっても破れていても、生きた花には命がある」
そうなんですね。まさに、「野に咲け~」には生花の美しさがあります。…あ、一応補足しておきますけど、「野に咲け~」は失敗の作ではありません。。

生きていると、当然不合理なこともたくさんあって、また、不可能にぶち当たり、落ち込むこともあるでしょう。
それでも、主人公・律子は怯むことなく自分のやりたいことをやり続けます。律子の前向きな生き方が眩しくなります。今でこそ女性の生き方は多種多様に用意されていますが、律子が生きていたのは大正から昭和の話で、その時期に自由な生き方を貫くことは容易ではなかったのです。
「こう決まっているからこうなんだ」という理不尽なルールは結構いろんなところにありますけれど、これに順応してしまうか不合理だと反論するかは人それぞれです。順応してしまえば楽だし傷つかないけれど、そこで生産性が停止してしまうんです。何も変わらない。変えようとも思わない。大正、昭和期って、女性はそんな生き方が当たり前の時代だったんですね。

「野に咲け~」で素晴らしいと感じるのは、ユーモアの配置が絶妙なところです。
しつこくないんです。あまりウケを狙いすぎると、とたんに小説全体がふざけた印象になって白けます。私もたまにそんな小説に出会い、なんとなく読んでしまうことがありますが、正直言うと低俗だなあと感じてしまうことがありますね。小説で笑いを取るって、実は非常に高等なセンスが要求されるんじゃないかと思います。
例えば、用事で家を空けることになり、律子は子供たちに手紙を出すのですが、
「直ちゃん、母ちゃんはおっぱいをいっぱいためて帰るから泣かないで待っててね、おっぱいがほしいときは、おとうちゃんにもらいなさい」
と、さりげなく書いてあります。こういう、誰でも笑えるユーモアがいいんです。さりげなく韻も踏んでいて読みやすい。

そして「こんなんアリか!?」と思った伏線についての感想を。
律子は物語の中盤あたりでお見合いを薦められます。で、お見合い相手は同僚の知り合いだったので、律子はその同僚に探りを入れます。するとその同僚、「あんたとは合わない」と見合いをやめるよう忠告します。理由について中盤では語られずじまいで、なんと「なぜについては、のちほど、本書の流れがそのときになってから、物語ることにしよう」と書かれてあるのです。神様(作者)が伏線を喋ってます。
伏線が回収されるのは、ほんとうに終盤の終盤です。私は、伏線があったことすら忘れていました。見合い相手の真相が語られるのですが、不意打ちを食らったようでした。これもまた上手い!

「青春デンデケ~」読後も同じことを感じましたが、こういう明るくて楽しい小説がもっと読みたいなあと思います。まあこれも繰り返しになりますが小説の「笑い」は高等技術。出会えることも珍しいものなんですが。

テーマ : オススメの本 - ジャンル : 本・雑誌

09:04  |  芦原すなお  |  コメント(0)

2011.01.29 (Sat)

芦原すなお たらちね日記

たらちね日記たらちね日記
(1995/02)
芦原 すなお

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作家の夫と息子をのこして突如死んだ妻は、あの世とこの世の間にとどまって、二人を見まもる。彼女への思いを胸にひたむきに哀しみをのりこえる二人。ファンタジックな構成の中に家族の絆、親子の愛をユーモラスに描く名作。(「MARC」データベースより)

死というのは、永遠の別れであるからこそ、悲しいものです。
仮に、死後も現世の様子を覗くことができるとしましょう。そうしたら、その悲しみは軽減されるのでしょうか。おそらく、悲しみの感情は薄れるかと思いますが、代わりにあれこれ懸念が生まれてしまいそうです。残された家族や友人は、自分がいなくてもきちんと生きていけるのだろうか、と。

この小説には、妻が亡くなった後、知人とゴミ出しのことについて話をする夫のセリフが出てきます。
「僕は人見知りするタチだ。僕にもよく頭に入るように、妻が言い残しておいてくれたらと、恨むんじゃないが、時に思うことがある」
「死ぬ間際に『いいこと、あんた、燃えないゴミは月曜日よ』なんて、言い残すのかい。ああ、ばかばかしくなってきた。もういい」
ジャイ、このやり取りに大爆笑。知人の呆れ顔が目に浮かびます。
けれど、実際の寡夫の中には、同じようなことを考えたりする方がいるのかもしれません。程度の差はあれど。
ちなみにこの夫、他にも世間知らずな行動を取っています。病院に行ったのに、保険証と現金を忘れてきます。自分が加入している健康保険の種類が分からない。ピンクの紙って言われても…窓口の職員さんも大変だろう。
そして、病院から自宅に帰ることができない。近所なはずなんだけど、道が分からず帰れない。こんな人間いないだろ!とツッコミ入れたくなるシーンがたくさん出てきます。
(ちなみに、この夫は、成年被後見人ではない普通の人間です)
こんな夫と、かわいい息子を残して旅立った妻は、そりゃ心配になって成仏なんかできなくなるでしょう。

大丈夫なのかとジャイまでが心配してしまう夫と息子ですが、なんだかんだトラブルに見舞われど、二人で解決して生きていっています。そんな二人を見届けた妻は、安心して旅立つ決意をし、一度だけ二人の前に姿を現します。

「心の整理」という観点からすれば、遺族よりも死んだ側の人間のほうが、死を受け容れられないのではないかと思います。ガンの告知を受けたりしない限りは、自分の死期なんて誰も予想しないでしょうから。
また、どうしてもやっておきたかった何かがあった場合にも、現世に未練が残るでしょう。
妻が現世に姿を現したのは、どうしてもやっておきたいことがあったから。
小説を読んだら、ラストで気持ちがほっこりするはずです。

残された遺族も、死んでしまった本人も、死を受け容れて未来へ向かって歩いていく。
少しだけ、死を前向きに考えることができる気がしました。少しだけですけど。

テーマ : 最近読んだ本 - ジャンル : 本・雑誌

09:00  |  芦原すなお  |  コメント(2)

2011.01.26 (Wed)

芦原すなお 青春デンデケデケデケ

久しぶりの、「オススメ小説」です。

青春デンデケデケデケ (河出文庫―BUNGEI Collection)青春デンデケデケデケ (河出文庫―BUNGEI Collection)
(1992/10)
芦原 すなお

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1965年の春休み、ラジオから流れるベンチャーズのギターがぼくを変えた。“やーっぱりロックでなけらいかん”―。四国の田舎町の高校生たちがくりひろげる抱腹絶倒、元気印の、ロックと友情と恋の物語。青春バンド小説決定版。直木賞、文芸賞受賞作。(BOOKデータベースより)

名前だけ聞いたことがあったけど、普通に生きていたら、きっと読むことはなかっただろう。高校生の青春ストーリー。ウォーターボーイズとおっぱいバレーが脳裏をよぎりました。あ、おっぱいバレーは中学生だったか。
もう、最初から最後まで面白かったです。
ロックを知らない自分がこれだけ楽しめたんだから、バンド経験者、もしくは小説の舞台となっている1965年あたりに青春期を経験した人たちがこれを読んだら、もうドツボでハマってしまうだろう。

小説に出てくる四国弁のやり取りが気持ちいい。四国弁の後にカッコ書きで標準語訳が付け足してあるのが、なんだか妙にウケました。ジャイは別に四国の人間じゃないのに、なぜ気持ちいいと感じるのだろう。方言の持つ温かさは全国共通なのでしょう。小説にあるのは四国弁だけど、読者は各々の頭の中に、自分の郷土の方言を思い浮かべて読むのです(地方出身者限定)。

高校生達が、楽器を手に入れるためにバイトし、練習し、挫折を経験し、学園祭での大成功を経て、最後はバンドの解散。
骨組みだけ説明したら普通の小説です。けれど、この骨組みに、コメディ物語顔負けの面白い肉がたっぷりと付いてきます。
ちなみに、肉のあとは、二玉で五十五円の大盛りうどんはいかがでしょうか(←これ、ほんとに小説に出てくるのです。時代が違うとはいえ、安いなーー)

学園祭での大成功の後、高校三年生である彼らには「別れ」が訪れます。
学生が結成したバンドというのは、ほとんどが卒業に伴って解散という結末を迎えるはずです。この小説もしかり。そんな儚さにちょっとだけ悲しくなりますが、それぞれの新しい道を胸張って進んでいく彼らに「がんばれ」と声をかけたくなります。

このブログを始めてから、たくさんの本を読みました。
感動する本、心の闇をリアルに表現した本、社会問題について考えさせられる本、色々なジャンルの本を読みました。
けれど、ここまで楽しく、すがすがしい気持ちにさせてくれる本はありませんでした。
こんな本がもっとあっても良いと思います。
直木賞受賞作というのも納得です。

テーマ : 最近読んだ本 - ジャンル : 本・雑誌

09:30  |  芦原すなお  |  コメント(2)
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