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2011.04.01 (Fri)

丸山健二 落雷の旅路

おすすめ小説です。

落雷の旅路落雷の旅路
(2006/10)
丸山 健二

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哀れな浮浪者でもなく、軽薄な夢追い人でもない、「初老の放浪者」の旅路を描く表題作のほか、岸壁の老婆から孤高の猪まで、森羅万象を導く超絶の短篇集。渾身の書き下ろし作品、全10篇を収録する。 (MARCデータベースより)

デビュー作で芥川賞受賞(しかも当時の最年少23歳)、「孤高の作家」として知られる丸山氏の小説を読みました。思考、ライフスタイルも独特な方です。こういう人、好き。ウィキペディアのプロフィールへのリンク→(こちら。)

人間とは、決められたコミュニティを大事にしすぎる生き物だと思います。
会社に勤めることを「決まったレールの上を走らされる」と揶揄するのは結構あることですが、それって会社だけのことではない。この世に生を受けた時点で、既に人間はあらかじめ決まった「箱庭」に入れられてしまっているんだと感じています。箱庭の中で生きていることを自覚する人間もいれば、それにすら気づかず一生を終える人間もいるわけです。
その「箱庭」には決まったルールが存在しており、従わない者には容赦無く罰が下ります。箱庭の中で一度でも失敗すれば失敗者の烙印が押され、一生背負って生きていかねばならないのです。
善悪の判断だって、道徳の視点だってそうです。あらかじめ決まった考え方があり、ダメなものはダメという理由の無い押し付けがまかり通る世界です。少しでも違う道を選ぶ異端者がいれば噂の標的にし、罵詈雑言を叩きます。物事の本質を見ようとせず、ただ世間体だけを大事にする生き物が人間なんです。
それは、私自身もここ二年ほどの間にぼんやりと感じていることでした。
この丸山氏の小説ほど、その思考を文章というカタチにしてくれたものはありませんでした。
だから今はとてもスッキリした気持ちでいます。この小説を読めてよかった。心からそう感じます。読んでいて、久しぶりにカタルシスを感じる小説でした。
型にはまらない生き方をする丸山氏の小説だからこそ、説得力が増している気がします。

(引用)「安全弁に頼りすぎる暮らしと見かけ倒しの善良な生活が生きる醍醐味を半減させていると言うことを全く理解していない、~、家畜同然の人種」
(引用その2)「記録に残されぬ平均値ばかりを求め続けてきたことに呆れ返る」

この小説の短編どれを読んでも、読者は「箱庭」の愚かさを知ってしまうでしょう。ただ、そんな箱庭から逃げ出すことは出来ないんです。ただ一つ、死を除いては。生きているということは、箱庭の中で生きるということです。
「旅をすること」が趣味だと聞くと、その人はきっと自由な性格なんだなと感じるでしょう。けれど、決まった観光ルートを辿って満足し、家族や同僚へのお土産をたくさん買って、帰りの飛行機の中で「あー明日からまた仕事だなー」と憂鬱になる、そんな人間が果たして自由だと言えるのでしょうか。それって箱庭の中にある公園でブランコに乗ってるようなもんだと思います。

10個の短編はそれぞれが独立していますが、ラストの短編「落雷の旅路」を読むのは最後にすべきだと思います(まあ普通の人はそのまま最後に読むと思いますが)。他の短編で人間世界の不条理を説かれズーンとなった心に響く、読みおさめを飾るにふさわしいラストが待っています。小説を読んでいて辛く重くなったとしても、「落雷の旅路」を読みきったとき、神々しいまでの爽やかな読後感が得られるでしょう。すごい、すごい。これは文句なしのおススメ小説。。
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テーマ : 最近読んだ本 - ジャンル : 本・雑誌

08:58  |  丸山健二  |  コメント(2)
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