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2011.04.09 (Sat)

武田百合子 ことばの食卓

ことばの食卓 (ちくま文庫)ことばの食卓 (ちくま文庫)
(1991/08)
武田 百合子

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食べものに関する昔の記憶や思い出を感性豊かな文章で綴るエッセイ集。(BOOKデータベースより)

川上未映子のエッセイ「世界クッキー」のなかで紹介されていた本です。
作家のエッセイを読むと、お勧めの書籍が紹介されていることが多く、読みたい本がどんどん増えていくのです。

この「ことばの食卓」には、食べ物がたくさん登場します。その手のエッセイは他にもたくさんありますが、大体は食べ物を非常に美味しそうに書いています。当然ですが。けれども「ことばの食卓」に出てくる食事の描写には、全く食欲をそそられません。なんというか暗いのです。どうしてこんなに暗いのか?一度読んだ後、ぱらぱらページをめくり返していて気づいたことが一つありました。
それは、「老人」の出てくる確率が非常に高いということでした。

(引用)口中でビワをもごもごまわし、長いことかかって歯ぐきで噛みつくしてから飲み下しています。
…歯ぐきで噛みつくして、ということは、このビワを食べている人には歯が無いことになります。つまり「老い」を間接的に表現しているのです。登場人物にもじいちゃんばあちゃんが多い。もしかすると、食べ物と同時に、裏テーマとして「老い」を語っているのかもしれません。

どうして人間は食べるのか。しごく簡単な問いですが、当然答えは「生きるから」です。それから、裏テーマとして老いが語られていると仮定するならの話ですが、老いの先に待っているものは「死」です。
「生きること」と「死ぬこと」とは対照的に感じられますが、私自身は同じ要素を持っているものと考えます。
このエッセイで語っていることが「食べ物、老い」だとすれば、突き詰めて考えると「生きること、死ぬこと」を論じているといえ、その二つは結局同じものだという考えに基づけば一つの包括的なテーマにたどり着くのではないでしょうか。
決してボリュームの多くない本なのに、それだけの大きいテーマが詰め込まれているなんて。

そして、暗いと評した食事の描写なのですが、ほんとうに独特なじっとりとする仕上がりです。ぜひ、このディープな世界を体験して欲しいです。うん、川上未映子が好きなのも、なんとなく分かる気がするー。。

(引用)一番後にとっておいたアンズを食べるときの気持ち。たるたるに、とろとろに、ふくらんで小鉢の蜜汁の中にぽっかり浮かんでいるアンズを、先ずしゃぶり、しゃぶったら蜜に浸け、しゃぶったら蜜に浸け、前歯で齧って歯形の付いた少し減ったアンズを蜜に浸け、惜しみ惜しみ一個食べ終わる。

あまり人間の心情について書かれていないのも何となく不気味であり、読後に怖さが残りますね。
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テーマ : 最近読んだ本 - ジャンル : 本・雑誌

08:52  |  武田百合子  |  コメント(0)
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