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2011.06.15 (Wed)

山本文緒 恋愛中毒

恋愛中毒恋愛中毒
(1998/12)
山本 文緒

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もう神様にお願いするのはやめよう。―どうか、どうか、私。これから先の人生、他人を愛しすぎないように。他人を愛するぐらいなら、自分自身を愛するように。哀しい祈りを貫きとおそうとする水無月。彼女の堅く閉ざされた心に、小説家創路は強引に踏み込んできた。人を愛することがなければこれほど苦しむ事もなかったのに。世界の一部にすぎないはずの恋が私のすべてをしばりつけるのはどうしてなんだろう。吉川英治文学新人賞を受賞した恋愛小説の最高傑作。(BOOKデータベースより)

まず全然関係ないところから感想が入りますが、この小説の主人公は「水無月美雨」。旧暦の六月が「水無月」と呼ばれていますよね。なぜ梅雨のある六月が水無月なのか、と疑問に思う方もいるでしょう。水無月とは、「水の無い月」という意味ではないようです。水無月の「無」という字は「の」という助詞の役割を持つため、「水の月」というのが正しい解釈だそうです。旧暦では、ちょうど田植えが始まる季節なので「水の月」と呼ばれるようになった、と言われています。
はい、それでは雑談から戻ります。

「恋愛小説」。1999年、吉川英治文学新人賞を受賞した作品です。同年、同賞の候補作の中には、あの東野圭吾の「秘密」がありました。「秘密」も名作ですが、その強力なライバルを押しのけて受賞した「恋愛中毒」。一体どんな小説なのだろう?
そんな私の勝手な期待を背負った「恋愛中毒」でしたが、読後の感想は、ずばり。

おもしろすぎます。

山本文緒さんの小説では、結構な確率で、限りなく「普通」に近いけれど「普通ではない」女性が登場します。
その書き方の上手さといったら。水無月さんがどんどん壊れていく!と思いながら読み進めていましたが、そうではなかったのです。彼女は、最初から普通ではなかった。あまり詳しく書くとネタばれになるので止めておきますが、序盤の水無月さんにはそこまでの不自然さが感じられません。やられた。気づかなかった。この小説を二度読むと、一度目に読んだときには気づかなかったさりげない伏線に感服させられると思います。
筆力のある作家だと思います。絶妙な人物描写も素晴らしいのですが、物語の構成力において桁違いだと思います。派手な文体ではないのに、どうしてこんなに力があるのでしょう。物語にぐいぐい引きこまれます。気づいたら、私は「恋愛中毒」の中毒になっていました。いやいや、参った。

そして、読後感にも山本文緒小説独特のカラーがあります。
決して明るい小説ではありません。「恋愛中毒」というタイトルで想像できるかもしれませんが、恋愛の明るい面ではなく暗い面にスポットを当てた作品です。読んでいて気持ちよくなる内容ではありません。それなのに、混沌とした気持ちで終わらせない。水無月さんの人生には紆余曲折あったけれど、彼女にとっては前向きな未来がここにあったんだね、という妙に納得するラストとなっています。非常にすっきりと読み終えることができると思います。物語にぐいぐい引き込まれて、人間のダークな心情をリアルに見せられ、どうしていいか分からなくなった読者をきちんと現世に送り返してくれる小説です。
うん、律儀だよね。

それにしても、水無月さんのように「恋愛が自分の全て」という感覚について共感できる方はどれくらいいるのでしょうか。別れた夫の家に執拗にワンコールしたり、好きな男が他の女性と部屋にこもっている間、ホテルの駐車場で男が帰ってくるのをじっと待っていたり。理解できない、気持ち悪いと感じる人のほうが多いかもしれません。
それでも、私は水無月さんが嫌いになれないのです。根本にあるのは純粋な「人を愛する気持ち」であると思うから。愛していれば何をやってもよいというわけではなく、気持ちに伴った「行動」に問題があったわけで。
水無月さんの他にも多くの女性が登場しますが、その彼女たちは、好きな男性とスムーズに交際するための「はけ口」を別に設けています。そうしてバランスを取って生きている。恋愛における処世術を身に着けているのですね。キレイな生き方です。だからって水無月さんの生き方が汚い、ドロドロしている、不器用だと片付けてしまいたくはありません。小説を読んでいくと、水無月さんに不思議な愛着がわいてくるのです。
水無月さんに共感できるか否かは、読み手に「心から愛した人」がいるかいないかで変わるのではないでしょうか。
恋愛… 誰でも経験する身近なテーマではあるけれど、深く語るとなると一筋縄ではいきません。人によっては、自己を破滅させてしまうほど強く膨らむ気持ちでもあるわけですから。難しいものですね。
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テーマ : 最近読んだ本 - ジャンル : 本・雑誌

07:56  |  山本文緒  |  コメント(4)

2010.11.19 (Fri)

山本文緒 眠れるラプンツェル

ねこまんま。
ご飯に味噌汁をぶっかけて食べるアレである。
ねこまんまについて、ジャイは夫とディベートしたことがある。
ジャイ「ご飯に味噌汁をぶっかけるメニューを『ねこまんま』と言い出したのはいつからなんだろう。今時『ねこまんま』を食べているネコはいるのか?もっといいものを食べているんじゃないのか?
つい何かのはずみで『ねこまんま』という名称をつけられてしまったけど、味噌汁+ご飯のコンビネーションは、誰だってこっそり一度はやったことがある国民食じゃないか。
ゼッタイに、ネコより人間のほうが、『ねこまんま』を食べているはずだ。
『ねこまんま』ではない別の名前をつければ、何も気にせず食べることができるんじゃないか?
赤ちゃんのよだれかけだって、最近ではスタイと呼ばれて、なんとなく上品なイメージが定着してるじゃないか。」

前フリが長くなったが、今回読んだ小説に出てきたネコも、なかなかいいものを食べていました。

眠れるラプンツェル (幻冬舎文庫)眠れるラプンツェル (幻冬舎文庫)
(1998/04)
山本 文緒

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昨日も暇だった。明日もたぶん暇だろう。結婚6年目、専業主婦。子どもはいない。退屈でない暮らしなど、考えただけでゾッとする。多忙な夫は今夜も家に帰らない。この緩やかな生活に、猫と隣家の息子が飛び込んできてから、何かが崩れ始めた。封印したはずの衝動。少年との、二人だけの秘密。嘘は次第に周囲を巻き込んで―。マンション住まいの主婦の平凡な生活が一変する様を、ドラマティックに描いた傑作恋愛長編小説。(BOOKSより)

「暇ですなあ」
パチンコが趣味で、家にはゲーム機があり、波風立たない毎日を淡々と過ごす主人公の主婦。
それでも本人はそれが幸せだと思って生きてきました。
そんな生活が、一匹のネコが家に来たことで一変します。
マンションの奥様方との、難しいコミュニケーションの一幕。
15歳年下の中学生との恋。
まるで昼ドラのような、怒涛の展開。
続きが気になってページをめくる手が止まりませんでした。

これまで無欲だった主人公は、それなりの幸せを手にして、それなりに満足して生きてきました。
でも、道ならぬ恋に落ち、「ダメなことは分かってるけど、この人と一緒にいたい」と強く望みます。
その欲によって、主人公は安定した生活を失い、実家の北海道へ帰っていきます。
でも、ただの破滅小説ではありません。
小説のラストにこんな文章がありました。
「どんな夢物語だって、想像すれば本当になる。未来はまだ決まっていないことだ。生きていれば、いつかそれは、本当になる」
ここまでストレートに論点を明文化している小説って逆に珍しいと思いました。
でも、小説の展開が混沌としているので、そういう終わり方にしなかった場合、ほんとにカオスな状態のまま読み終えてしまい、ただのドロドロ小説という感想で終わってしまうでしょう。
うまいなあと思います。

多くの場合、家族とは、自分を肯定してくれ、自分に生きる意味を与えてくれる存在です。
でも、そうではない場合もたまにあったりします。
カタチだけの夫婦。カタチだけの家族。
もう30代だしそろそろ身を固めないと・・・とか、経済的に苦しいし・・・なんて消極的な理由で結婚を決める場合もあるはずです。
きっと、その事実にだけ気付くことがあっても、何も感じず同じ生活を続けるでしょう。
ほとんど、諦めの境地です。
でもそこで、どうしようもなく好きになれる相手が見つかったら?

主人公は、孤独な人生を謳歌しているように見えたけれど、心の底ではやっぱり、かけがえのない誰かと一緒につながっていたかったんだと思います。
そのかけがえのない誰かと出会えたから、主人公は全てを捨てることが出来たんでしょう。
それだけ、人と人とがつながることって、大事なんです。

面白かったです。
山本文緒さんの小説、他にも読んでみようっと!
角田光代バブルも続いてるし、どんどん読みたい本がたまっていくぞー。

テーマ : 本の紹介 - ジャンル : 本・雑誌

09:36  |  山本文緒  |  トラックバック(0)  |  コメント(2)
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