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2011.02.01 (Tue)

池上永一 トロイメライ

ようやく読めました。「テンペスト」とセットにして、おすすめ小説としておきます。

トロイメライトロイメライ
(2010/08/18)
池上 永一

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唄とグルメは那覇の華。武太を惑わす、6つの難事件。犯人は誰だ!?19世紀、幕末時代の琉球王朝。無職の三線弾きだった武太は、新米岡っ引きに任命された。意気揚々と正義に燃えるが、世の中うまくいかないことばかり。毎夜どこかで起こる事件と、一喜一憂する庶民の人情に触れながら、青年はひとつずつ大人への階段を上っていく―。 (BOOKデータベースより)

自分の「2010年読んだ本の感動ランキング」を作るとしたら、上位入賞確実なのが「テンペスト」です。
その「テンペスト」の著者が、テンペストの外伝的な位置付けで書いた作品が「トロイメライ」だと聞いていたのですが、外伝と言ってしまうのはもったいない、充実した内容の本でした。それでも、ぜひ「テンペスト」を読んでから「トロイメライ」を読んで欲しいです。
宣伝文句になっているのは「テンペスト」の登場人物が「トロイメライ」に再登場しているということですが、他にも読み比べをして欲しい理由があるのです。
「テンペスト」は、琉球の美少女・真鶴が、性を偽って宮仕えするという物語です(超大雑把な説明!)。つまりは官目線での物語。比して「トロイメライ」は、庶民目線での物語になります。同じ琉球を舞台にしていると思えない、正反対の世界が描かれています。当時の琉球王国の貧富の差、官と民の格差を感じ取れる小説です。なので、そういう意味でも、ぜひ読み比べを。

「トロイメライ」の世界は、愛らしい登場人物で溢れています。主人公の武太、お茶目な大貫長老、をなり宿の三姉妹、鍋・竃・甕。ウハハ、料理人修行中の姉妹だからって、ナベとカマドとカメって…
「焦げつかさないようにね」
「はいアンマー」(←アンマーとは母のこと)
「混ぜる速さは一定だよ」
「はいアンマー」
…このやり取りを聞くと、ジャイはサンダーバードの「はいパパ」を思い浮かべてしまう。
また、三姉妹の作る琉球料理がとても美味しそうなのです。ピーナッツから作られるジーマミー豆腐、自分はまだ食べたことありませんでしたが、一体どんな味なんだろう?
(引用)口腔に広がるピーナッツの香りに口が膨らんだ。続いて黒砂糖の風味がやってくる。最後に漂うのは古酒の重厚な香りだった。
他にも、サーターアンダギーやラフテーが出てきて、生唾ゴクリ。わ、わたし、すぐにでも沖縄行きたいです。。

と、ここまでは庶民の生活で「楽しい」一面を取り上げてみましたが、違う面からも覗いてみたいと思います。
当時の琉球王国の貧富の差は激しいもので、街には多くの失業者が溢れていました。貧しい家庭から子供を奉公にだす、所謂「身売り」が行われていました。その行く先は、一生結婚できない女官だったり、遊女だったり、海人だったりします。特にこの海人、過酷な「糸満売り」という制度について、私は小説を読むまで知りませんでした。全裸で集団生活を送り、素潜りで漁をさせられるのですが、魚が取れなかった場合は食事にほとんどありつけないと言うのです。当然、死んでしまう少年もいたそうです。親に売られて、望まない生活を強いられて、子供達はなんのために生きるのでしょう。
けれど、こんな現実の中、小説には黒マンサージと呼ばれる義賊だったり、富の再配分を目的に活動する遊女が出てきたりします。搾取するという行為だけ考えれば、彼らも悪ということになるのでしょうが、それなら糸満売りは果たして正義と言えるのでしょうか?

そんな琉球王国の過酷な現実ですが、それでも島民の心の根底には「島への愛」がありました。
ラストの章で、武太は美しい那覇の都を高台から見下ろして、涙を流すのです。
「ワン(自分)はあそこで生まれてよかったなあ…」
武太のセリフは、島民全員の気持ちを代弁しているかのようでした。
琉球って、いいね。ああ、やっぱり沖縄行きたいです。
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テーマ : 最近読んだ本 - ジャンル : 本・雑誌

09:15  |  池上永一  |  コメント(0)

2010.12.15 (Wed)

市川拓司 そのときは彼によろしく

たまに寄り道するワタシ。

そのときは彼によろしくそのときは彼によろしく
(2004/03/31)
市川 拓司

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小さなアクアプラント・ショップを営むぼくの前に、ある夜、一人の美しい女性が現れる。店のドアに貼ってあったアルバイト募集のチラシを手にして―。採用を告げると彼女は言った。「私住むところがないの。ここに寝泊まりしてもいい?」出会うこと、好きになること、思いやること、思い続けること、そして、別れること...。ミリオンセラー『いま、会いにゆきます』の著者による、最高のロマンチック・ファンタジー。(BOOKSより)

ワタクシ、「いま会いにゆきます」、「恋愛写真」の二冊は既に読んでおりました。
市川拓司三冊目「そのときは彼によろしく」も、胸を熱くする小説です。
熱くするといっても、熱湯ではなく電気毛布のように(変なたとえ?)ジンワリと身体を温めてくれる感じです。

感想としましては、とにかく小説内の世界が美しいということに尽きます。
市川拓司にかかると、ゴミ捨て場でさえも、こんなにキレイな書き方ができるんですね。
小説全体が、透明感の高い青色・緑色のイメージです。
主人公が営むアクアプランツショップの風景も重なって、キラキラ、ユラユラ
まるで架空の町にいるような錯覚を起こします。

おそらく「そのときは彼によろしく」では、大部分の読者は主人公と花梨のくだりで泣くんだろうと思うのですが、ワタクシは違うところで泣きました。
どこですか、って?主人公と父の関係について、です。

タイトルになっている言葉の由来は、小説の終盤で明らかになります。
一人息子を50歳になってから授かった父の想い。
主人公は老齢の両親を友達に見られるのが嫌だったようですが、そんなことお構い無しに、両親は胸を張って学校行事に参加します。
父がどれだけ息子を愛していたか、小説の終盤でこれでもかと言うほど語られます。
ここは、できれば実際に小説を読んで体感してほしいです。

(引用)いま思い出しても胸が痛くなるよ。おむつで膨らんだ尻を揺らしながら、部屋の中を歩いていたお前の姿。つい昨日のことのようだ。私は幸福すぎて死んでしまうんじゃないかと思ったよ。
この部分を読んで、ジャイはたっぷり泣きました。

実は、小説の中盤あたりの部分で、「幸福は少なすぎるから取り合いになるんだ」と書かれているのです。
誰かの不幸の上で成り立つ幸福。そうじゃない幸福なんてあるのだろうか?
いや、そうじゃない幸福も、あるんです。
主人公の父は、これが言いたかったのではないかと思います。

花梨とのことも、父とのことも、つまりは人と人を繋ぐ愛情のストーリーなのですよね。
テーマは一緒なのだと思います。

(ちなみに個人的な感想ですが、この小説、たまにカユくなるようなセリフが出てきます。「100歳まで生きて幸福の年金をもらわなくちゃ」とか。まあ、言いたい意味が的確に伝わるから、いいかもしれないけど。)

ところで、いつ戻ってくるのか分からない人を待ち続けるって、現実では難しいことかと思います。
本当に愛した人であっても。
主人公は30歳のときに愛する人と別れ、その後10年間も待ち続けます。
周りの人間が結婚して子供が出来ても、さびしいとは思っても、その寂しさを他人で埋めようとしない。
そこのところは、案外女性のほうがリアリストかもしれません。
きっとジャイなら、他の楽しい人生を選択していることかと思います…(スマン!)

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09:30  |  市川拓司  |  トラックバック(0)  |  コメント(4)
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