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2011.05.19 (Thu)

小川洋子 妄想気分

妄想気分妄想気分
(2011/01/26)
小川 洋子

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日常の中にある異界への隙間……
すこしばかり耳を澄まし、目を凝らすと日常の中にある不思議世界への隙間が見えてくる。そこから異界を覗くとき、物語が生まれる。著者の学生時代から現在までのエッセイを収録。 (内容紹介より)

小川洋子さんのエッセイ集です。ファンタスティックなタイトルだけど、しごく全うな内容でした。小川洋子さんという人は、かたちが無いものを大事にし、一日一日を丁寧に生きているんだなと感じました。
この本は、エッセイではあるけれど、「美しい生き方」「シンプルライフ」系の自己啓発本にもなりうる本だと思います。
作家とは小説を書く職業ですが、エッセイも面白いです。小説、エッセイを両方味わうことでシナジー効果が生まれ、その作家の人となりを味わい尽くすことができるようになると思います。

本を読むことは、登場人物の人生を疑似体験することです。
「妄想気分」を読んで、小川洋子さんになりきってみよう。さあ、何から始めようか。
小川さんが大学生時代によく作ったという、ライスコロッケを作ってみようか。
残りご飯にミックスベジタブルを混ぜ、塩コショウし、チーズを中に入れて俵型に握り、コロッケのように揚げるというとっても経済的なメニューです。3個食べると胸焼けするというからご注意を。
当時、小川さんは戸建ての寮で、他四名の女子大生と共同生活を送っていたそうです。海外旅行やブランド品には興味が無かったとか。思わずうなってしまいます。花の女子大生(死語?)に似合わない質素な生活を送られていたようです。
自分自身のことを考えると、現在でこそシンプルライフ志向で、スナフキンのごとく荷物を増やすのが苦痛になる性格でありますが、それは20代の頃に贅沢のきわみを尽くしたからこそ辿り着いた境地であり(何だか偉そうな表現を使ってしまった)、初めから質素な生活LOVEという考え方は持てませんでした。

エッセイを読み、更に過去へとさかのぼってみます。
小川さんは、小・中・高と学生時代を総括し、どんな「女子グループ」にも属さなかったといいます。
女子グループを客観的に見つめる小川さんの姿がとても面白いのです。グループに加入するための審査はどのように行われるのか、リーダーにはどう接すればいいのか、謎だらけだったといいます。

女子グループというコミュニティについては、大きく分けて
①友達を作るために積極的にグループへ入ろうとする
②女子グループなんて面倒くさいと思っているけれど、入らないのも何かと問題が生じるためしぶしぶ入っておく
③必要性を感じず自分から溶け込もうとしない
という3つの行動パターンがあるかと思います。

①が最大勢力であり、②がちらほら隠れている感じでしょうか。自分自身は②のタイプです。
③はかなり珍しいタイプだと思いますが、小川さんはこちらに属する方だったようです。かっこいいと思ってしまいました。エッセイでは、修学旅行の部屋割りで自分の名前が抜けていたという切ないエピソードも披露してくれています。

質素な生活を送っていることに加え、周りに流されない性格、確固たる自分をお持ちの方です。こういう人、好き。このエッセイを読んで、小川洋子さんのファンになってしまいました。
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08:01  |  小川洋子  |  コメント(8)

2011.02.02 (Wed)

荻原浩 メリーゴーランド

メリーゴーランドメリーゴーランド
(2004/07/01)
荻原 浩

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過労死続出の職場を辞め、Uターンしたのが9年前。啓一は田園都市の市役所勤務。愛する妻に子供たち、あぁ毎日は平穏無事。…って、再建ですか、この俺が?あの超赤字テーマパークをどうやって?!でも、もう一人の自分が囁いたのだ。“やろうぜ。いっちまえ”。平凡なパパの孤軍奮闘は、ついに大成功を迎えるが―。笑って怒って、時々しんみり。ニッポン中の勤め人の皆さん、必読。 (BOOKデータベースより)

「なんてツマラナイんだ」と思いました。
…ツマラナイのは小説ではありません。「守り」に転じる姿勢のことです。

私見になりますが、この小説を読んで、公務員ってこんなに楽な職場なのかと信じてしまった読者がいたら、全国の公務員がかわいそうです。
朝から夕方まで、お茶飲んで終わりなんて部署はありません。
勤務時間中に歯医者(しかもホワイトニング)に行く公務員なんていません。
17時終業で、16時45分に帰る仕度を始める公務員も… うん、これは、少しいるかもしれない。
のんべんだらりな姿勢の公務員は、割とシニア層に固まっているかもしれません。彼らは、まだ公務員が「お上」と呼ばれ崇められてきた時代から勤務しているわけで、そんな長年の習慣によってフットワークが非常に重くなっています。まあ、こういう職員がいることは問題かと思いますが、幸か不幸か、自動的に数年後には退職されて姿を消してくれます。

また、過去に無かった仕事をやりたがらない「前例主義」や、いい結果を出すことよりも不始末をしでかさないことのほうが大事と言う「保守主義」も、よく言われる公務員の特徴です。
けれど、この「不始末」を恐れる公務員の気持ちも、分からないでもないのです。
小説内にその答が用意されています。

主人公の啓一は、再建するテーマパークの内部にいろいろと看板を設置する予定でした。
『バラの棘にご注意ください』『坂道は大変転びやすくなっております』
そんな看板について、別の登場人物がこう意見します。
「やめなよ、ころぶのは坂が悪いんじゃない、転ぶやつが悪いんだ。口うるさいセンコーがあちこちに立ってるみたいだ」
そ・の・と・お・り・だーーー!!
最近、至る所で過保護すぎる説明やサービスが目立ちすぎだと思います。
それは、何かトラブルが起きたとき、主催者側の責任にする保護者が多すぎるからなんだと思います。
そこで主催する側としては、クレームへの予防策として看板を立てかけるわけです。何かあったときの責任を回避するために。にしても、バラに棘があるのは当たり前だし、何でも注意を呼びかけることが果たして正解と言えるのでしょうか。
自身に起こったわずかな災難も、他人の責任として転嫁してしまう考え方が普通になりつつあるのでしょうか。なんだかゾッとします。

そして、啓一の息子・哲平の運動会では、事前に測ったタイムに従って生徒を並べ替え、徒競争の走順が決まっていました。
足の遅い子供に劣等感を植え付けるのは良くないという、保護者の意見によってです。
これだって、『バラの棘にご注意ください』看板と通じるものがありますね。
保護者のねじれた思いやりが、精神的に弱い子供を作り上げ、過度の依存を作り出してしまうんじゃないでしょうか。

大切なものを守りたくなる、その気持ちは理解できます。
ただし、変な形で「守り」に入ってしまうと、それはとたんにおかしいものとして映ってしまうわけです。
啓一は、おかしい「守り」へ次々と切り込みを入れていきました。
役所の閉鎖的な部分に手を突っ込み、周りから非難されながらもテーマパーク改革を行ったこと。
来場者へ危険を知らせる看板を全て撤去したこと。
何かを変えるというのは勇気が要ることだし、時には何かを失うこともある、危険な行為といえます。
平凡な公務員のはずの啓一がヒーローになった、この小説。いろんな意味で、読んでみる価値アリだと思います。

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09:30  |  荻原浩  |  コメント(0)
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