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2011.03.04 (Fri)

芦原すなお 野に咲け、あざみ

野に咲け、あざみ野に咲け、あざみ
(2008/10/09)
芦原 すなお

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自立の心と負けん気で幾多の試練を乗り越えて「いのちの花」を咲かせた泣き虫律子の多感な青春。実母をモデルに波乱の昭和と讃岐の「女坊ちゃん」誕生を描く。
四国新聞、西日本放送などで好評連載。直木賞作家の最新長篇小説。 (内容紹介より)

芦原すなお。「青春デンデケデケデケ」がものすごく面白く、他の著書も読んでみたいぞ!という欲求がむくむくむくむく湧いてきました。「野に咲け、あざみ」は、そんな私の期待に真っ向から応えてくれました。うん、面白かった。
今回の小説は、芦原さんの母親の実体験がベースになった物語です。ほぼノンフィクション・ノヴェルとのこと。ノンフィクションがこんなに面白いなんて。素材が素晴らしいのもありますが、それに飄々とした「芦原節」が加わって、読み物としてパーフェクト(お世辞ではなく)な仕上がりになっています。
そういえば田山花袋(「蒲団」の人です)がこんなことを言っていました。
「事実を骨子として描いたものなら、たといその作品は失敗の作であろうと、そこに動かしがたい『事実』という点がある。いかに美しくても造り花は造り花、傷があっても破れていても、生きた花には命がある」
そうなんですね。まさに、「野に咲け~」には生花の美しさがあります。…あ、一応補足しておきますけど、「野に咲け~」は失敗の作ではありません。。

生きていると、当然不合理なこともたくさんあって、また、不可能にぶち当たり、落ち込むこともあるでしょう。
それでも、主人公・律子は怯むことなく自分のやりたいことをやり続けます。律子の前向きな生き方が眩しくなります。今でこそ女性の生き方は多種多様に用意されていますが、律子が生きていたのは大正から昭和の話で、その時期に自由な生き方を貫くことは容易ではなかったのです。
「こう決まっているからこうなんだ」という理不尽なルールは結構いろんなところにありますけれど、これに順応してしまうか不合理だと反論するかは人それぞれです。順応してしまえば楽だし傷つかないけれど、そこで生産性が停止してしまうんです。何も変わらない。変えようとも思わない。大正、昭和期って、女性はそんな生き方が当たり前の時代だったんですね。

「野に咲け~」で素晴らしいと感じるのは、ユーモアの配置が絶妙なところです。
しつこくないんです。あまりウケを狙いすぎると、とたんに小説全体がふざけた印象になって白けます。私もたまにそんな小説に出会い、なんとなく読んでしまうことがありますが、正直言うと低俗だなあと感じてしまうことがありますね。小説で笑いを取るって、実は非常に高等なセンスが要求されるんじゃないかと思います。
例えば、用事で家を空けることになり、律子は子供たちに手紙を出すのですが、
「直ちゃん、母ちゃんはおっぱいをいっぱいためて帰るから泣かないで待っててね、おっぱいがほしいときは、おとうちゃんにもらいなさい」
と、さりげなく書いてあります。こういう、誰でも笑えるユーモアがいいんです。さりげなく韻も踏んでいて読みやすい。

そして「こんなんアリか!?」と思った伏線についての感想を。
律子は物語の中盤あたりでお見合いを薦められます。で、お見合い相手は同僚の知り合いだったので、律子はその同僚に探りを入れます。するとその同僚、「あんたとは合わない」と見合いをやめるよう忠告します。理由について中盤では語られずじまいで、なんと「なぜについては、のちほど、本書の流れがそのときになってから、物語ることにしよう」と書かれてあるのです。神様(作者)が伏線を喋ってます。
伏線が回収されるのは、ほんとうに終盤の終盤です。私は、伏線があったことすら忘れていました。見合い相手の真相が語られるのですが、不意打ちを食らったようでした。これもまた上手い!

「青春デンデケ~」読後も同じことを感じましたが、こういう明るくて楽しい小説がもっと読みたいなあと思います。まあこれも繰り返しになりますが小説の「笑い」は高等技術。出会えることも珍しいものなんですが。

テーマ : オススメの本 - ジャンル : 本・雑誌

09:04  |  芦原すなお  |  コメント(0)

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