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2011.05.16 (Mon)

村上春樹 約束された場所で

約束された場所で―underground〈2〉約束された場所で―underground〈2〉
(1998/11)
村上 春樹

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癒しを求めた彼らはなぜ無差別殺人に行着いたのか?オウム信者へのインタビューと河合隼雄氏との対話によって現代の闇に迫る(内容紹介より)

(引用)「麻原と末端の信者たち一人ひとりというのは、わけて考えないといけません。~。末端の信者には本当に純粋な心を持っている人がいます。~。そういう人たちがかわいそうだなと僕は思うんです。結局のところ世の中のシステムに受け入れられない人、肌が合わない人、あるいはそこからはじき出された人、そういう人たちがオウムに入ってきているんです」

この文章は、オウムの信者の言葉です。
正直に申しますが、私自身、オウム真理教の信者とは自意識を持たずに教祖をひたすら尊敬し、服従している人形のような存在だと思っていました。けれど実際には、驚くほど「普通の人たち」だったのです。前作の「アンダーグラウンド」に続いて、テレビ等では報道されていない、知らなかった真実が見えてきました。

インタビューされている信者の話を読んでいると、変わった人だなと感じるところがほとんどありません。入信した経緯だって「近所にたまたま道場があって、何となく見学に行って信仰を決めた」というような、ほんのはずみのような軽いスタートの場合が多いのです。家庭環境だって悪くありません。家族との不和で居場所が無くなり逃げるように信心したということでもないのです。現に、一連の事件の後、出家していた信者の中には実家に戻った方もいるようです。

そんな「普通の人たち」がどうして入信に至ったのでしょうか。
冒頭で信者の言葉を引用しましたが、信者の方もそうでない方も、人間であれば多種多様なことを考えるはずです。自分の思考と世の中のシステムを比較したときに、合致することもあれば全く違うことを考えることだってあるわけです。自分も中学生のとき「なんで学校にいかなければならないのだろう」と思ったことがあります(村上春樹自身も学校は嫌いだということでした)。世の中の決まりきったことに対し疑問や反抗の念を抱くのは、何らおかしいことではないと思います。
けれど、この社会というものは、決まりきったことを非常に大事に考えます。決まったことに従うのが善、反抗するのが悪という二極化の構図が成立してしまっています。違っていても気にしない、他人から陰口をたたかれることなんて自分には関係ないとデンと構えていられるのは強い人間です。けれど、そうではなく精神的に純粋な人間の場合、社会の圧力に負けてしまうのだと思います。周りから冷たい目で見られる、自分の考えていることはおかしい、他の人と違う、世間には受け入れてもらえない…となると、人格を全否定されたかのように感じてしまうのでしょう。そして、入信してしまうのです。
だから、オウム真理教の信者だって普通の人なのです。ものすごく純粋な普通の人なのです。

一連の事件が起きた後も、それにオウム真理教が関与していたことについて、信じることができないという信者がたくさんいたようです。自分たちがそんな悪いことをするわけがない、と。事件に関与していたのは上層部の人間で、そことは区別するべきなんだと思いましたが、やはりオウムはオウム、総括しての悪いイメージはどうやっても拭えない感があります。この言い方が適切かどうか分かりませんが、末端の信者だってある意味では被害者なのかもしれません。

このノンフィクションを読んで得られたものは、オウム真理教の冷酷さ、非道さ、奇妙さではありませんでした。
純粋すぎる人間たちが安心して生きていける居場所が存在する社会になればいいという願いでした。
07:52  |  村上春樹  |  コメント(4)

Comment

イマイチよくわからない事件でしたよね~。
組織ってバカバカしさを共有すればするほど結束するのかも、なんて思いました。
…ということはさておき、
オウム真理教って何か別の組織に操られていたんじゃないかという気もします・・・
読書系女子 |  2011.05.16(月) 18:21 | URL |  【編集】

待ってました~♡
『約束された場所で』二回読みました。

面白かったです。なんというか、「オウム真理教」というものが、内部の人の肉声で知る事ができたという面白さがまずありました。ああ、こういうことをしていたのか、信者はこういう毎日を送っていたのかという驚きを得ました。

そして、それこそすぐ隣に住んでいてもおかしくないような、ちょっと敏感すぎたり考えすぎてしまう一般の人が、この日本社会に疑問を持った時、す~っとこういう場所に入って行ってしまうのも深くうなずけました。

ジャイさんのおっしゃっているとおり、日本という『社会』のあり方についても考えさせられました。学校へ行って、会社へ行って、結婚して、子供生んで・・・みたいな『普通』の生き方だけでなく、もっと多様な生き方や価値観もあり、という寛容さがあってもいいよなあ、と。

ただ、面白かっただけに、もう少し詳しくしりたいという物足りなさがあります。もっとオウム真理教の上層部に居た人たちの話も聴きたかった。そして麻原という人についてももう少し掘り下げて読み解いてみた本があったら、ぜひ読んでみたいと思います。

この事件を考えたとき、この日本という国の歪みを知ることができるという、すごさがあります。そして、人の中に潜む闇の部分についても。だからこそ、一度は真剣に考えなければいけない事件であるし、その機会を与えてくれたという点で、この本に出会えて良かったと感じます。

あああ~~~長い文になっちゃいました。ごめんなさい~~~。
空花 |  2011.05.16(月) 21:59 | URL |  【編集】

Re: タイトルなし

読書系女子さん

コメントありがとうございます。
確かに、何かを共有すると結束が強まるというのは、どんな組織にでも当てはまることです。バカバカしいことを本人たちは大真面目にやっていて、陶酔して、その結果でもって自己を認めているのかもしれません。

そしてこの本に書いてありましたが、オウムは、もともとは割と普通の(?)宗教団体だったようです。けれど、信者が増えていくにしたがい、何かがおかしな方向にいってしまったようです。人間とは一人では微力だけれど、たくさん集まると強大な力を持ったような錯覚に陥ってしまう生き物だと思います。操られていたとしたら、ほかでもない自分自身の負の感情に、かもしれません。
ジャイ |  2011.05.16(月) 22:14 | URL |  【編集】

Re: タイトルなし

空花さん

コメントありがとうございます。こちらの本は前作と比べて薄いから、同じ時間を使ったら何度も読めてしまいますね。信者の話も興味深かったのですが、巻末の対談も面白くて(前もおなじこと言ったような気がするー)、深くて、理解するために何度か読んでしまいました。
前にお薦めいただいた「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」もネットで注文してしまいました。まだ届いていません。早く読みたくて、うずうずしています。

信者の方たちは、内面や精神を深く掘り下げていける、作家に近い感性を持っているように感じました。日常にある疑問、生きていることへの苦悩など、常に何かを抱えながら生きていたのでしょう。
作家はその抱えているものを文章にして、思いを昇華させているのだと思います。
対して、信者は己の持つ繊細な心を理解してくれる宗教団体へ居場所を求めたのでしょう。そして悩みから開放されたのです。

>日本という『社会』のあり方についても考えさせられました。学校へ行って、会社へ行って、結婚して、子供生んで・・・みたいな『普通』の生き方だけでなく、もっと多様な生き方や価値観もあり、という寛容さがあってもいいよなあ、と。

そうですね。もっと多様な生き方があってもいいとは感じます。模範的なレールがあれば、確かに何もかもは簡単にことが運びます。親や先生は「あれを目指して頑張るんだよ」と言えるし、それから外れたときに注意もしやすいです。予期せぬことが起こったときに、それが歓迎すべきことなのか避けるべきことなのか、レールがないと判断が難しかったりもします。レールは生き方を簡単にする。でも、そんなに簡単じゃないと思います。多様な考えを持つ人間を統率することは、そんなに簡単なことじゃない。
空花さんのおっしゃるとおり、この国の「歪み」を感じることができた本でした。

わたし自身も、いろいろなことを考えてぐじゃぐじゃぐじゃ~となってしまい、たまに夫に愚痴り「考えすぎだ」と言われたりすることがあります。けれど、他人に愚痴れるのはそれでも表面的なことばかりで、水面下ではもっとカオスなものがウゴウゴしているような状態です。自分がこんな状態だから、オウム信者のことが他人事とは思えないのです。

ジャイ |  2011.05.16(月) 22:40 | URL |  【編集】

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